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大会テーマ「地域の絆づくりと住民主体のまちづくり」
~高齢社会における地域の絆づくりが提案される~ |
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平成28年度全道町内会活動研究大会が、去る6月14日、札幌市かでる2.7において、道内各地より308名の参加を得て、開催されました。
大会は、表彰、基調説明、講演の内容で行われました。講演は、北海道新聞編集委員の福田淳一氏を講師に招き、「超高齢社会~人と人とのつながりを考える」をテーマにお話いただきました。
大会席上、北海道町内会連合会表彰式が執り行われ、18組織70名の方々が表彰を受け、受賞者を代表して、深川市の安藤一彦さんが謝辞を述べられました。
以下、講演の概要をご紹介します。
講演「超高齢社会~人と人とのつながりを考える」
講師 福田 淳一 氏(北海道新聞編集委員) |
私は、この4月から北海道新聞の生活面で「超高齢社会の絆」というタイトルで、親子の絆、高齢者と地域社会の絆を考えるという記事を書いています。高齢社会というと暗いイメージがありますが、今は非常に元気な高齢者が多い。問題なのは、高齢者が社会から孤立することだと思っています。
新聞のおくやみ欄を調べると、札幌の方は、道内その他の地域と比べて、おくやみを出さない方が多くなっています。さらに、誰が何歳で亡くなり、葬儀が終わりましたという「葬儀終了」の形での掲載割合が札幌では30%程度と多くなっている一方、葬儀委員長を立てる割合は3〜4%にまで減っています。このことから、札幌で地域とのつながりが薄れている一端が伺えます。
葬儀は、ここ10年程で小規模化しています。家族葬が増えたほか、お通夜や告別式をしない直葬という形も東京では増えてきています。葬儀の小規模化の背景には、ひとり暮らしの高齢者が多い、親族や親しい友人が少ない、リタイア後の人生が長くなり職場との関係が薄くなったなどがあります。また、かつてのような遺族が全く知らない会葬者が大勢来る葬儀への反動もあると思います。現代では、プライバシーを大事にして、付き合いを広げたくない、煩わしいと思う人が、非常に多くなりました。
また、お墓を維持する後継者がいない方も多いため、自治体などで合同墓を造る例が、道央を中心にとても増えています。ある霊園では、希望の期間を過ぎたらお墓を撤去し、遺骨は合同の墓地に埋葬するという制度を設けるなど、「墓終い」が最近注目されています。
プライバシー、個人情報を守ることは必要ですが、福祉の現場では、高齢者や困っている人の存在がわからないと、手の打ちようがありません。これからは、個人情報は大切にしながら、個人情報を活用する時代ともいわれています。現代人、特に都市部の方は、プライバシーと個人情報を守って、葬儀も身内だけでやり、人との付き合いを広げないことから、孤独、孤立となる傾向にあります。ところが、矛盾したことに、人間は孤独、孤立に耐えられません。高齢化、長寿化とともに、人間の孤独化、孤立化が同時に進んでいることが問題です。
私が書いた記事で一番反響があったのは、おひとりさまの旅行サークル「旅友ゆうゆう」(札幌)を紹介した記事です。ご夫婦で旅行に行く方が多いため、おひとりさまは、なかなか旅行に行きづらい。そこで、みんなで集まり、バス旅行をはじめランチ、麻雀、カラオケなどを楽しくやりましょうという優れたサークルです。
2014年4月に初めて紹介した時には、弊社に「会の連絡先を教えてほしい」という問い合わせの電話が約200件も殺到してみんな驚きました。昨年10月にもその後の状況を含めて紹介しています。現在の会員は670人にも達し女性が8割、男性が2割です。そして発足以来、旅行や各種行事の参加者は延べ6200人にも達しています。この会の会員からは「夫に先立たれて泣いてばかりいたが、会に参加し元気になった自分に驚いている」「離婚し父母、弟を見送って自分の周りに誰もおらず、このまま世の中から消えたかった。でも会に出会えて前向きに生きられるようになった」という声が聞かれます。やはり人は孤独、孤立に耐えられないのですね。この会のような工夫で、楽しく過ごせる仲間が必要なのだと思います。
流行語にもなった「終活」。元気なうちに自分の荷物を少し整理しておく、あるいは葬儀やお墓の準備をしておくなどの活動のことです。私は、北海道の情報を盛り込んだ「北海道 終活がわかる本」を出版しました。3世代同居が当たり前の時代には、死後のことは長男夫婦に任せればよかったのですが、長男がいない、いても遠方に居る、仲が悪いなどの事情を抱える方が増えています。
家族との同居が減り、最期の準備も自分でやらなければいけない世の中になってしまいました。エンディングノート、生前整理、遺言、成年後見、葬儀、お墓をどうするか。死をテーマにした「千の風になって」という歌や「おくりびと」という映画がヒットするなど、人々の意識も変わりました。そして、終活は子どもの問題でもあります。例えば、親が亡くなった後の家をどうするか、主婦の友社の「親の家を片付ける」という本がかなり売れている状況です。
日本の高齢化は世界最速で、今では4人に1人は高齢者です。特に北海道では、人口の3割近くが高齢者となっています。北海道で特徴的なのは、単身あるいは夫婦2人で暮らしが非常に多いことです。全国的にみても、1980年は子ども世代との同居が過半数を占めていましたが、今ではひとり暮らしや夫婦2人暮らしが過半数を占めており、「子どもに迷惑をかけたくない」というのが中高年の合言葉になっています。健康で自立して生きるというのは良いのですが、社会にも迷惑をかけたくないということで、中には、介護が必要なのに介護保険を受けない方もいます。介護保険は、およそ半分は公費ですが、残りは我々の保険料から支出されています。保険料は年金からも天引きされるうえ、受ける時に自己負担もあるので、社会に迷惑をかけているわけではありません。
今、団塊世代が高齢者の仲間入りをしていますが、地域の老人クラブへの加入者が少ない傾向がみられます。団塊の世代の高齢者はとても元気で自立しているので、従来の高齢者とは意識が変わってきているようです。しかし、75歳になると、人は病気がちになり、認知症の発症率も増えます。これにより、年金・医療・介護などの社会保障費の不足が心配され、「2025年問題」といわれています。対策として専門家は、平均寿命からおよそ10歳下がるといわれている健康寿命を延ばすこと、例えば、運動や禁煙など、生活習慣を見直して健康な期間を長くするよう呼びかけています。
年金や介護問題を考える時のイメージとして、高齢者1人が乗ったお神輿を多数の若い人で担いでいたのが、少子高齢化により、今では騎馬戦型、将来的には肩車型になるといわれています。元気な高齢者は、お神輿に乗るのではなく、社会参加してお神輿を少し担ぐ側に回ってほしいと思います。かつては一次産業が中心でしたから、例えば漁師であれば、一番大変な仕事は長男に譲っても、陸揚げの作業や網外し、網の補修などを手伝えましたが、サラリーマンが主流の現代では、定年退職すると仕事との関わりが全て切られてしまいます。リタイア後の高齢者は、若い人と同じとはいかなくてもやれることはあるので、地域社会で何らかの役割をもっていただきたいと思います。
道内の65歳から74歳の高齢者で、要介護・要支援の認定を受けているのは約5%、逆にいうと95%くらいの方は元気だということです。政府は「人生90年時代」を提唱していますが、社会の要請だからというより、個人の幸せのために、社会参加をした方が良いと思います。認知症の予防、運動、人とのつながりができるなど、良いことがたくさんがあります。
親子の絆がまず大事ですが、遠くの子どもより近くの他人の方が頼りになることもあるので、高齢の親と地域社会、第三者との絆は本当に大切です。65歳を過ぎても今は元気な方が本当に多い。元気な方は、他の高齢者を助けて絆を深めるなどの役割で、社会を支えていくことが必要だと思います。
私個人の意見として、葬儀をしないという風潮には少し危うさを感じています。何万年も前の人類の祖先であるネアンデルタール人は、死者に花を手向けるなどの弔いをしていました。死者を弔うのは、人間と他の動物を分けるものではないかと思います。東日本大震災の被災者で、家屋財産を失うとともに、家族の葬儀をしていないことで苦しんでいる方がいたそうです。やはり、弔うことに人との縁、つながりが非常に端的に現れてきます。弔いと、人との絆はとても密接な関係があると思います。今日、私がお話をさせていただいたのも、何かの縁です。一番大事なのは、人と人との縁、つながりだという姿勢で、皆さんと一緒に超高齢社会をこれからも考えていきたいと思います。
(文責 事務局)
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