北海道町内会連合会創立40周年記念 平成30年度全道町内会活動研究大会の報告

大会テーマ「共に生きる社会づくり~地域共生社会の実現へ~」
~町内会による住みよいまちづくりを考える~

 

 

 北海道町内会連合会は、道内の町内会活動の活性化を図り、誰もが安心して暮らせる住みよいまちづくりをめざして昭和54年に結成され、本年度で40周年を迎えます。
 これを記念した全道町内会活動研究大会が、去る5月29日、札幌市かでる2・7において、道内各地より330名の参加を得て、開催されました。
 本年度の大会は、記念表彰、大会宣言、記念講演の内容で行われました。記念講演は、首都大学東京人文科学研究科教授の玉野和志氏を講師に招き、「町内会による住みよいまちづくり」をテーマにお話しいただきました。
 記念表彰では、創立40周年記念北海道町内会連合会功労者特別表彰588名、北海道町内会連合会表彰25組織が受賞されました。
 以下、講演の概要と大会宣言文をご紹介します。

 

 

▲高橋はるみ知事より来賓挨拶

 

▲記念表彰

 

講演「町内会による住みよいまちづくり」
   講師 玉野 和志 氏(首都大学東京人文科学研究科教授)

 

■ 町内会をめぐる動向

 

 戦後、行政が十分なサービスを提供できなかった時期、住民が自分達でお金と労力を出し合って防犯灯を設置するなど、町内会は自発的に身銭を切って地域で重要な役割を果たしてきました。
 しかし、高度経済成長期を経て、行政サービスの充実や、地域との結びつきが薄いサラリーマン世帯の増加などにより、徐々に町内会の力が弱まっています。特に90年代以降は、多くの町内会が、加入率の低下や担い手不足などの課題を抱えています。
 その一方で、財政力の弱い行政が果たせない公的サービスや、相次ぐ災害に備える自主防災の担い手として、町内会に対する期待は高まっている状況にあります。

 

■ 町内会の性質

 

 町内会活動に対する住民の無関心と担い手不足は構造的な問題です。町内会は全戸加入を原則としており、地域の住民にとって必要な活動をする組織です。このような公的な活動は、誰かが維持してくれたら他の人はやりたがらないという性質があるため、環境美化や防犯などの町内会活動による利益を受けているにもかかわらず自分は負担をしない、つまり、タダ乗りをする住民(フリーライダー)が出てきます。これを防ぐため、町内会活動が住民にとって道徳的な義務であることを強調したり、町内会への参加を法制化しようとする傾向があります。
 しかし、活動への参加を義務化すると住民の反発が生じやすいほか、活動者に報酬を支払う必要があるかもしれません。こうなると、隣近所への見守りなどの日常的な活動や、災害・緊急時の支援などの柔軟な活動が難しくなり、住民の自発的な協力によって活動する民間団体としての町内会の強みを失ってしまいます。町内会活動は、それぞれの住民が負担できる範囲で楽しみながら参加してもらうのが健全な形といえます。

 

■ 町内会のいくつかの可能性

 

 最近、私は、町内会の「親睦」の機能を再評価すべきだと感じています。私が住む地域の町内会では、楽しみながら地域の情報交換をする簡易な食事会を班単位で定期的に実施しています。大掛かりな行事を実施しても続けることが負担になりますが、親睦のための簡易な食事会などであれば、負担が少なく続けていけますし、見守りや災害時の支え合いに役立つ近所の情報が日常的に入ってきます。このような活動を細々と続けて、住民が負担を感じることなく町内会を維持していくことが今後大切になってきます。
 また、町内会役員の負担を軽減するために、行政への協力業務の見直し、市民活動団体への部分的な委託や協力のほか、日常業務をこなす執行部とは別に企画部門を設けるなど、様々な可能性が考えられます。
 町内会には、少ないながらも安定した資金と、これまで築いた行政や各関係機関との太いパイプがあり、この強みを十分に活かせば、今後も地域で町内会が力を発揮していけると思っています。

(文責 事務局)

 

大会宣言文

 

 かつて、日本の社会は、地域の相互扶助や家族同士の助け合いなど、地域・家族・職場といった人々の生活の様々な場面において、支え合いの仕組みが存在していました。
 しかし、少子高齢化や人口減少が進む中、社会構造は大きく変化し、生活領域におけるこうした支え合いの仕組みが弱まってきています。さらに、多くの地域社会で社会経済の担い手減少を招き、暮らしの基盤となる地域経済にも大きな影響を及ぼしています。
 こうした、日本社会の構造変化は、地域社会そのものの存続という危機感にも繋がる重要な事であり、その地域に暮らす全ての住民が我が事のこととして考えていく必要があります。
 今、国では地域住民一人ひとりが地域を共に創っていく「地域共生社会」の構築を目指しており、まさしく、地域住民が主体的に地域課題を把握し、解決を試みる支え合う体制の一つとして、改めて町内会活動に期待しているところであります。
 私たち町内会活動実践者は、これからの日本社会のあり方である「地域共生社会」の重要な担い手として、行政、社会福祉協議会をはじめ関係機関・団体と連携を図りつつ、住民同士が助け合い支え合う地域社会の実現をめざしていくことを誓います。
 これらを受け、本日ここに、北海道町内会連合会創立四十周年記念全道町内会活動研究大会を期して、当面次の事項について、積極的に推進していくことを決議し、誰もが安心・安全に暮らせる住みよい北海道づくりに向け、一層努力することを誓います。

 

一、

ひとりの不幸もみのがさない住みよいまちづくり全道運動を「災害に強いまちづくり全道運動」と連携して事業をすすめ、北海道社会福祉協議会、北海道共同募金会と協働で、各市区町村との連携により、町内会・自治会における見守り、助け合い活動を推進します。

一、

災害に強いまちづくりのために、いつ起こるか分からない様々な災害に対応できるよう、住民による自主防災活動の推進を図るとともに、行政や地域での諸団体と連携した安心・安全なまちづくりを推進します。

一、

安心・安全な町内会活動の推進のため、会員相互扶助の目的である「道町連共済」の加入促進を図るとともに、「災害に強いまちづくり全道運動」と連携して、安心・安全のための事業充実を図りながら、道町連の組織拡大に努めます。

平成三十年五月二十九日
北海道町内会連合会

 

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