令和元年度全道町内会活動研究大会の報告

大会テーマ「地域の絆と安心・安全なまちづくり」

 

 

 令和元年度全道町内会活動研究大会が、去る5月28日、札幌市かでる2・7において、道内各地より約300名の参加を得て、開催されました。
 大会は、表彰、基調説明、講演の内容で行われました。講演は、国立病院機構函館病院名誉院長で日本笑い学会理事でもある伊藤一輔氏を講師に招き、「長寿社会を楽しく健康に生きるコツ~笑いに学ぶ健康学~」をテーマにお話いただきました。
 大会席上、北海道町内会連合会表彰式並びに平成30年度町内会・自治会広報コンクール表彰式が執り行われ、33組織68名の方々が表彰を受け、受賞者を代表して、倶知安町の佐藤裕さんが謝辞を述べられました。
 以下、講演の概要をご紹介します。

 

 

▲大会の開会挨拶 

 

▲表彰式

 

講演「長寿社会を楽しく健康に生きるコツ ~笑いに学ぶ健康学~」
   講師 伊藤 一輔 氏(国立病院機構函館病院名誉院長)

 

■ 道民笑いの日

 

 8月8日が道民笑いの日と知っていますか?実は、平成28年8月8日、道民笑いの日が全国で初めて制定されたのです。では、どうして都道府県で初めて北海道が8月8日を道民笑いの日を制定したのでしょう。今から4年前、知事選挙があり、その時に当時の高橋知事の公約、新北海道ビジョンの中に、「健康長寿の社会づくり、8月8日を道民笑いの日と定め、笑いによって健康長寿を促す道民活動の推進により、健康寿命都道府県順位33位、10ランクアップを目指します」というのがありました。その公約を守って制定してくれました。道民の健康寿命の延伸のために、笑いが健康にもたらす効果に着目して、笑いによる健康づくりを道民に普及することを目的に、道民の笑いの日を制定されました。

 

■ 北海道笑ってもいいんでない会

 

 私達の北海道笑ってもいいんでない会は、「ハハハ」にちなんで平成8年8月8日午後8時8分8秒、をカウントダウンして旗揚げしました。この当時、国際労働機関(ILO)から、日本人は働きすぎると。日本政府は、それで国民の祝日を増やすことを計画していました。国民の祝日に、「8月8日笑いの日」の制定をお願いしたのです。残念ながら山の日とか、海の日とかが祝日となり、笑いの日は祝日にはなりませんでした。私たちは、それを契機に日本笑い学会北海道支部として「北の大地をユーモトピアに」を目標に、笑いが幸せな健康を保つ潤滑油で、健康を保つ万能薬なので、これをもっと勉強して、より豊かな人生を目標に旗揚げをしたわけです。

 

■ 超高齢化社会と健康寿命

 

 今や人生は100年時代を迎えています。世界保健機関(WHO)が健康的に生活できる期間を表す健康寿命ということを打ち出しました。日本人の平均寿命から、健康寿命を差し引いた介護が必要になる期間が、男性で平均9年間、女性で12・4年間もあります。
 日本は世界一の超スピードで高齢化社会になり、2025年には、働く世代が1・8人で高齢者の1人を支えなくてはならない時代が来ます。健康寿命を延ばして、元気な老人は、雪かきや買い物などお手伝いが必要なひとをサポートするという仕組みを作り、地域で最後まで暮らすための「地域包括ケアシステム」を全国で展開しています。そこでは、町内会やクラブ、自治会、そういうものの大切さも強調されているのは、皆さんご存知のとおりだと思います。
 健康寿命の延伸には、子どもから大人までの健康教育と健康教養がもっとも大切だと思います。高齢者にとっても、「教育」は「今日行く」ところがあること、「教養」は「今日用事」があること。この2つが大切だと思います。

 

■ 心も体も使わないと衰える

 

 最近医学的に分かってきたのは、体力とか知的機能よりも、感情とか情動など心が先に老化をすることにより、体力とか知的機能が老化することがわかってきました。感情・情動の老化の原因としては、人間らしい思考、意欲、性格、理性、感情をつかさどる脳の老化があります。
 体力は、トレーニングするとほぼ保たれます。しかし、高齢になると、体力は使わないと衰えが激しいのです。知能も実は老年期まで伸び続けるということがわかってきました。知能は、結晶性知能と流動性知能に分かれます。結晶性知能は、過去の経験が土台になる専門的、個人的な能力を指し、専門的な知識とか料理などの日常習慣、長年にわたる趣味の手順などであり、加齢による降下が少なく、むしろ増加するのです。
 一方、65歳を超えると少し落ち気味になるのは、結晶性知能で、新しいことに適応する、例えばパソコンを使うなど、思考力や暗記力、計算は少し低下傾向にあります。しかし、全体的には、使い続けると落ちないということがわかってきました。
 昔、1日脳細胞が300万個死滅と言いましたが、脳細胞の数はまったく関係ありません。ポイントは、脳細胞と脳細胞をつなぐシナプスによるネットワークを発達させることが大切なのです。刺激がネットワークを発達させます。新しいことにチャレンジしたり、経験したりすることで、脳はどんなに年をとっても成長することがわかってきた。だから健康に生きる鍵は皆さんの心にあります。心が動けば体も動くということ、絶対的な法則は、心も体も使わなければ衰えるという法則です。

 

■ 人間は笑う生命体

 

 地球上の生命体のなかで笑う生命体は人間だけです。なぜ人間は笑うように進化したのでしょうか。
 その理由の第1が、社会のなかで生きるために、笑うようになりました。私達人間は1人では生きられません。日常の「コミュニケーションとしても笑い」は人間関係の潤滑油となっています。そして、「思いやりと愛の笑い」があります。笑顔は人のこころを温めます。
 その2は、健康に生きるために笑う生命体になりました。最近「笑う門には福来たる」が医学的に証明されてきました。笑うと免疫力がアップします。(笑いの実験)漫才を聞いて三時間大笑いすると、ナチュラルキラー細胞が活性化しました。ナチュラルキラー細胞活性は、がん細胞などをたたきます。ナチュラルキラー細胞活性は、高齢になると急速に低下してきます。どうしたら活性化するのか。それは、笑うこと、感動して泣くこと。人に話を聞いてもらうこと、楽しい好きなことをする。つまり心地いいことが大切で、ストレスが大敵です。
 また、笑うと脳が活性化することが分かりました。また、笑うと副交感神経が優位になって、心臓血管系に有効ということがわかってきました。
 その3は、「にもかかわらずの笑い」です。
 私たちは、生老病死、絶望的なことに襲われることもあるかもしれません。そんな時にこそ、「にもかかわらず笑って見る」のです。笑いやユーモアが窮地からの救いの心の武器だった事例がたくさんあります。笑いは苦しみ悩む人間に与えられた贈り物といえるかもしれません。辛い時こそ、笑ってみましょう。

 

■ 笑うとなぜ健康にいいのか

 

 笑うことで、脳内のストレスがブロックされて、自律神経系の交感神経から副交感神経が優位となり、内分泌系や免疫系が改善する。笑いや喜びはプラス思考で、健康に良いほうに働いて、一方、ネガティブな感情、不安やマイナス思考は健康に悪いほうに働く。私達の心は単独で働くのではなくて、体中の自律神経系、内分泌系、免疫系と神経伝達物質を介して、お互い影響し合います。心と身体は実は一体なのです。
 どうしても笑えない、辛くて笑えない時は、作り笑いでも、脳は騙されて、笑っている時と同じ作用が身体にも起こることがわかってきました。「あなたの笑顔なによりの薬」です。
 では、笑えば病気が治るかというと、予防はあるかもしれないけど、病気は治らない可能性が強い。でも病気になったら、医師にすべて任せるというのでなくて、よく話を聞いて、自分が前向きに生きることがとても大切なことです。

 

■ 笑ってお別れをするためのコツ10か条

 

 笑ってお別れするためのコツ10か条をお話します。インディアンの本には「あなたが生まれてきた時、周りの人はみんな笑っていたでしょ、あなたは泣いていたでしょ」、「だから、あなたが死ぬ時あなたが笑って、周りの人が泣くような人生を送りなさい」とあります。
 私の独断ですが、高齢化社会を健康に生きるには、車に例えると「食事」と「運動」の両輪が欠かせませんが、一番大切なものはエンジンつまり原動力の「笑い」です。笑いは前向きの象徴です。そして、地域での支えあいが大切です。

 

■ 笑いの三原則

 

 「面白い時には笑う」。「面白そうな時に笑う」。「面白くなくても笑う」。一番大切なのは皆さんの努力です。
 来たる2025年には、3人に1人が高齢者となり、人生90年時代です。これから高齢者が主役になりますが、そのために元気で健康寿命を伸ばすことが重要です。今日の講演が皆さんのこれからの生き方に少しでもお役に立てばありがたいです。皆さんが住み慣れた自分の町で、幸せに楽しく暮らして、笑ってお別れできますように願っています。

 

(文責 事務局)

 

笑ってお別れをするためのコツ10か条

 

 

自分が楽しむ人生のために、最後まで健康で暮らす。

楽しく前向きに生きる。過度のストレスを溜めない。「逆らわずいつも笑顔で従わず(サラリーマン川柳)」。

ライフスタイルを見直して悪い習慣があったら直す。

過度に肥満にならないように食生活は腹八分目。痩せすぎも禁物。痩せすぎない。

定期的な運動。運動が老化防止、認知症予防などにとても良い。65歳以上は、中等度の有酸素運動。

塩分は控えめでタバコは絶対やめたほうがいい。「塩と煙とは縁を切る」

かかりつけ医を持つこと。持病がある人のほうが長生き。健診は大切。もったいない死を避ける。

自分のお別れを考えて、家族や親しい人にどこでどういう風にしたいか、話したり書いておく。

日々、笑顔を絶やさず前向きに過ごす。遠くの親戚よりも身近な人の関係を大切に。

いつでもあなたが考え方を変えれば、あなたは幸せな生き方が出来ます。

 

close