令和3年度ブロック別町内会活動研究大会の報告

 
 

大会テーマ 「安心・安全な住みよいまちづくり」

 
 

 

 

 

 令和3年度令和3年度ブロック別町内会活動研究大会が、去る10月29日札幌市において、オンライン開催として、道内各地より300名を超える視聴を得て開催されました。
 大会は、講演、実践報告会の内容で行われましたので、概要をご紹介します。

 

講演の概要

テーマ「地域の安心・安全をめざして」

講師:近畿大学 総合社会学部 教授 松本 行真 氏

 

 

◆2018年胆振東部地震から3年

 

 2018年9月6日午前3時すぎ。地震発生時、私は研究仲間の3人で函館市のホテルに宿泊していました。エリアメールがブーブー鳴って地震を知らせていました。函館は震度5弱でした。停電のためスマホのRadikoで地元民放を聴くと、各地の震度を読み上げる女性の声が震えていました。停電のためスマホの充電サービスは混雑しガソリンスタンドは大渋滞でした。東日本大震災の時も同様でした。さらに、自宅で発電機を動かして一酸化炭素中毒で亡くなった方がいました。災害慣れしてないから慌てるんだと思いますが、道内各地の知人に話を聞くと、住民組織レベルで動いていなかった。情報不足やデマの流布によって不安が増大していたなどの話を聞きました。そこから私の疑問が生じました。

 

◆地震を振り返り、3つの疑問と課題

 

 一つ目は情報不足がなぜ生じたのか。二つ目は何故みんなで協力してしのげなかったのか。三つ目は、胆振東部地震から3年経過しましたが、その後の有事対応の教訓になっているのかの3つです。
 この疑問に対する課題を方策として、①町内会・連合会を情報の起点・拠点とする。②情報の流れを整理することで「つながり」をつくる。③行政頼りにはせずに、自分たちで出来ることをする。この3つの方策により問題提起をしていきたいと思います。

 

 

◆方策1 単位町内会・連合町内会を情報の起点・拠点とする

 

 自治体防災担当者の調査結果(2021.1実施)から、単位町内会・連合町内会からの連絡が情報伝達先として単位町内会・連合町内会へ流れて情報共有し活用されているのが4割以下に留まっています。一方で、単位町内会・連合町内会と連携しない中でも、約7割の自治体が情報収集等はよく出来たと評価しています。課題として、自治体と単位町内会・連合町内会の関係が弱く、自治体対住民という個人の関係となっていて、組織対組織の関係になっていないことがあげられます。

 

◆方策2 情報の流れを整理してつながりを作る

 

 単位町内会・連合町内会において、情報の流れを整理して、班→単位町内会→連合町内会の「つながり」をつくれないでしょうか。調査結果を見ると、情報は、身内、町内会の「内」での共有に留まっています。連合町内会で情報を吸い上げたとしても、「内」での共有に留まり、行政やメディアとのつながりは出来ていません。要するに、身内同士の情報のやりとりになってしまっているのが現状ではないでしょうか。課題として、単位町内会・連合町内会「外」との普段からの関係構築が必要ではないかと考えます。

 

◆方策3 行政頼りにはせず、自分たちで出来ることをする

 

 連合町内会では、連合町内会内外の官民連携した情報収集・共有・発信体制の構築が望まれています。同時に、「地域・住民に関わる情報とりまとめ拠点=連合町内会」という社会的意義を発信していく必要があります。単位町内会では出来ないが連合町内会に出来ることはないのでしょうか。自治体防災担当者は、単位町内会・連合町内会との連携で有事対応を求めていることが調査結果からも明らかです。それぞれが出来ることをしっかりやり、その先に協働が生まれてくるのではないかと考えます。

 

◆災害時に日頃の「顔の見える関係」で有事を乗り切る「福島県四倉地区」の事例

 

 東日本大震災被災地の福島県いわき市は震災前の人口が35万人。東京と仙台のほぼ中間に位置しています。常磐ハワイアンセンター(現・スパリゾートハワイアンズ)があるところです。原発事故で最大3万人ぐらいいわき市内へ避難しており、また津波により約300人の犠牲者が出ています。これからご紹介する四倉とはご縁がありまして、2009年に、四倉のふれあい物産館を道の駅に変えるお手伝いをさせていただきました。ワークショップの時には、四倉地区の区長会長さんなどをはじめとした地元の方々が大勢集まり、侃々諤々の議論を経て、2009年12月24日に道の駅が開業しました。その1年半後の東日本大震災による津波で被災しました。
 震災後、4月下旬から道の駅に仮設テントを張って仮営業を始めています。翌年8月には二階建ての立派な建物となり再開業しています。これら四倉地区復興のキーパーソンになったのは、区長会の会長さんと道の駅の取りまとめ役であるNPO法人よつくらぶの理事長さんのお二人だと思います。

 

◆四倉地区区長会の東日本大震災後の対応

 

 東日本大震災後、四倉地区区長会(連合町内会)の対応をヒアリングしました。それによると第一波前の避難誘導は出来たそうです。しかし、第一波で避難して、大したことなかったので戻って亡くなった方が20名おられるということです。一方で避難は出来たけど、その後の物資配分、在宅避難者への対応が課題になりました。こうした東日本大震災を教訓として、区長会を中心とした「四倉地区防災連絡会議」を立ち上げ避難訓練も熱心に行いました。四倉地区は市内他地区と比べても避難訓練への参加者はかなり多く、結束力や動員力は高いといえます。

 

◆2016年11月22日に福島沖地震が発生

 

 早朝に発生した福島沖地震は震度5弱で津波警報が発令されました。その地震発生から1週間後に四倉地区区長会長と四倉支所の方々にヒアリングを行いました。対応できた部分の一つに住民同士の避難者受け入れがありました。一方で、各地で渋滞が発生し、早朝6時だったため「誰が鍵を開けるのか」という避難所開設の対応が課題として残りました。翌月にアンケート調査をお願いし、津波警報を受けて、住民組織がどう対応したのかをうかがいました。回収率が約8割と多くの方に協力をいただきました。そこでは津波想定浸水エリアを中心に渋滞が発生しました。例えば、JR常磐線の遮断機が降りっぱなしになり、踏切で大渋滞が発生したそうです。また自由回答で良かった点としてあがったのが「高台の自宅に知り合いが避難してきた」こと。悪かったのが「渋滞」、また「どこに行けばいいのかわからない」が課題としてあげられました。

 

◆2019年10月に東日本台風・豪雨による断水、四倉地区の給水対応

 

 東日本台風・豪雨により約10日間の断水がありました。その後、班単位でアンケート調査をさせていただき、回収率がほぼ100パーセントでした。東日本大震災の時、在宅避難者に対して物資配分が出来なかったという教訓があり、区長会の会長が音頭を取って、各区長・町内会長さんにお願いして給水対応にあたりました。「避難所に入れなかった」、「新生児がいたので車の中で過ごした」などの課題があげられましたが、区長会主導による給水対応の取り組みは一つの成果と判断しています。これは住民同士の関係が強いというプラスの面が顔の見える関係につながり、災害時、有事の際にできたことなのかなと思います。

 

◆今はオンラインで顔の見える関係をつくるチャンス

 

 これまでは対面中心の関係構築でした。今はコロナのために、オンライン会議とか主催する側にとっては顔が全然見えないので物凄くやりにくいです。反面、間口が広がった部分は大きいともいえます。
 町内会にとって、「ピンチはチャンス」じゃないですが、オンラインで顔の見える関係をつくるチャンスとも考えています。今、この大会をオンラインで視聴されている現役世代の皆さんがどれだけいらっしゃるでしょうか。
 現役世代が町内会に参加しにくい理由としてあげられることが、一つ目に敷居が高い。いわゆる暗黙知の多い組織となっているのではないでしょうか。二つ目に活動時間が平日で参加しづらく、仕事が休みの土日はプライベートに費やしたいこと。三つ目に町内会自体を知る機会が少ないことです。昔は子供会などを通じて知る機会がありました。

 

◆提案1 暗黙知を形式知にして共有する~いわき市薄磯区会の事例より

 

 「暗黙知を形式知にして共有する」とは、知らない・聞いてない等を回避するために役員会等での議論を公開することです。一方で、「知らない」とは言い訳ができないので、参加意欲もわかってしまいます。この後にお話しいただく苫小牧市拓勇東町内会さんの報告にも一部含まれるのかなと思います。「知ってもらうことで敷居を下げていろいろな世代を巻き込む」という提案です。
 例えば、薄磯区会では、集会所にあるホワイトボードに月1回開催される役員会の議事概要が次の役員会まで残されていて、議事録や町内会関係の資料は鍵が掛かっていない棚にあるなど、誰もが見られるような状況になっています。また、概要を『うすいそだより』として月1回、回覧板で回しています。

 

◆提案2 どこででも参加出来るオンラインを活用する

 

 今、Zoom会議で時間や場所の制約は緩くなっていて、若い人の取り込みが容易になるのではないかと思います。一方で、スマホなどのツールの使いこなしの個人差が出てくるため、旧来のやり方も併用すると二度手間になることもあります。薄磯区会の役員さんは13人で、上が70代、下は40代、LINEで役員会の告知もしています。この後の千歳市町内会連合会さんからはオンラインを活用して、間口を広く、手間を減らし、告知効果を高めながらつながっていく・・・といった報告をしていただきます。

 

◆提案3 メディアを巻き込む

 

 自分自身の関心事で申し訳ないんですが、メディアを巻き込んで「認知→関心→関与」の流れをつくれないものか。とにかく知ってもらうことが大事だろうと思います。昔、町内会は身近なものでした。今は知らない人が多い。そこはメディアも含めて巻き込んでいくのが大事なのではないかと思います。いわき出身で福島のテレビ局に在籍するアナウンサーは新人の頃からいわき沿岸部の継続的な取材しています。その成果を放送し、地域内外へ地域の復興状況を発信しています。そうしたメリットがある一方、メディアの人たちとの距離の取り方は難しいんじゃないかと思います。この後に室蘭市町内会連合会さんの報告の中にある「人とメディアの関係づくりを通じてみんなを守る」ことにつながっていくのかなと考えています。

 

◆住民主体の支え合い・安心して暮らせる地域づくりを実現するために

 

 住民主体の支え合い・安心して暮らせる地域づくりを実現するためには、災害や有事対応は個人では限界があります。みんなで乗り切るという意識づけが必要だと思います。有事において適切に行動するためには情報が必要です。個人単位での情報収集は難しく、ある程度の規模を持った組織として単位町内会もしくは連合町内会での情報のやりとりが必要です。単位町内会・連合町内会はそうした意義・役割をみんなに知ってもらい理解してもらう工夫が必要です。最後に、薄磯区の皆さんとよく話していることですが、地域づくりは無理をせずオープンに何か面白そうなことをやってるなと遊び心も大切なんじゃないかなと考えています。

 

実践報告会

 

 

テーマ①:コロナ禍で絆を育むデジタルとアナログを合わせたハイブリッドな

     町内会活動
報告者:苫小牧市 拓勇東町内会副会長 佐藤一美 氏

 

 苫小牧市拓勇東町内会(3,300世帯)は、平均年齢34歳と若い世帯の多い町内会です。アパートに暮らす世帯が人口の半数以上を占め、加入率は40%と低く、町内会加入は1,280世帯です。昨年、拓勇東町内会はコロナ禍で距離を取らなければならない時こそ心のつながりが大切という思いで、ZoomやLINE等のオンラインを活用した新しい手法を取り入れて、昨年1年間実施した町内行事は60回以上に及びます。令和2年4月より会館の閉鎖が繰り返され、一部の役員はオンラインで会議をするようになりましたが、スマートフォンやパソコンを持たないシニア役員たちは参加出来ず、このまま若手役員のみで町内会運営を進めることで、積み重ねた世代間の交流や信頼感が薄れる心配がありましたが、役員活動費からの一部補助を決め、町内会長をはじめ部長ら12名にタブレットの購入を勧めました。デジタルに興味や関心がなかった世代でも、リモート出演等がテレビでも行われていた影響もあってか、皆さん躊躇せずに購入を希望されました。タブレット研修では、町内の大学生と仕事で日常的に使っている役員で何度も行い、12名の役員全員がZoomでつながることができました。さらに町内会の文書をクラウドで共有することで議事録の確認が簡単になり、文書印刷や配布が不要になりました。コロナ禍が続く中、来場者百名を超す「班長区長会議」は、参加方法を①従来通り開催日時に会場に集い参加する方、②自宅などからオンラインで参加する方、③録画を視聴するYouTube、のいずれかを選択出来ることとしました。このハイブリッド開催で個人の都合に合わせて会議の参加方法を選択できたのは大きな成果でした。もうひとつの成果は、役員の負担軽減と三密をクリア出来たことです。リモート行事で時間的拘束が減ったことで、高校生や就業者、子育て世代の役員たちが活動しやすくなりました。ある高校生役員は自ら提案し、自宅からパソコンとスマートフォンを使って小学生たちに「オンライン絵本読み聞かせ」を行いました。同時に、アナログの交流も促進しました。緊急事態宣言中、役員やその子どもたちが分担し、手書きのコロナ見舞いはがきを地域のシニアへ送り多くの反響が寄せられました。行事の中で反響が大きかったのが「ドライブスルー敬老会」です。集合時間を分散させた指定時刻に会場(小学校)へ車か徒歩で来てもらい、車から降りることなく出口へ抜ける一方通行としました。会長が声をかけてお祝いセットのお弁当やお餅を手渡し、短い時間ながら会話を交わし参加者の元気な姿を見ることが出来ました。このようにコロナ禍というピンチは町内会のデジタル化というチャンスにつながりました。
 

テーマ②:インターネット回覧板での地域の活性化~電子回覧板とホームページ回覧板
報告者:千歳市町内会連合会 事務局長 徳永 隆 氏

 

 千歳市町内会活性化支援事業は、千歳市と千歳市町内会連合会による町内会役員の高齢化や役員の担い手不足解決のための事業構築が発端となり、平成30年度から3年間、札幌市のコンサルタント会社「KITABA」さんに依頼して実施しています。この事業はホームページの活用がキーポイントで、町内会連合会や単位町内会の活動紹介が重要と考え、千歳市町内会連合会ホームページに各単位町内会のホームページを連携して設定できる構造としてリニューアルしました。各単位町内会がホームページを立ち上げる流れは、①千歳市町内会連合会にホームページの立ち上げ依頼をする。②各単位町内会のごみ回収・防災情報などの基本情報を制作会社「クリアデザイン社」が初期設定する。③その後、単位町内会担当者に掲載手順をレクチャーして、以後は各単位町内会が自ら記事掲載を行う手順となっています。こうして、ホームページを立ち上げた町内会は現在12か所の状況です。この3年間の取り組みから、令和2年度の白樺町内会の「ホームページ回覧板」の事例をご紹介します。インターネットによる情報伝達は、メール・SNS等の活用が難しいなどの課題があり、町内会においては進んでいないのが現状です。そんな中、白樺町内会はホームページ立ち上げを契機に、回覧板をホームページに掲載出来ないかと検討が始まりました。白樺町内会は市内でも高齢化率が高い地区です。インターネットが当たり前の若い世代に町内会活動への参画を促す上でも、今、行うべきとの会長の決断により、白樺町内会の「ホームページ回覧板」がスタートしました。導入にはパソコンやインターネットに詳しい若い世代の方にサポートをお願いし、「白樺町内会情報化協力隊」を編成。回覧板の紙文書をホームページに掲載する作業は、会長のお宅で協力隊の方やKITABAさん、町内会連合会事務局も集まり、作業手順を実習しました。白樺町内会のホームページ回覧板は約3ヶ月のモニターアンケートの結果、「インターネットを利用出来ない人のために紙と併用してはどうか」、「高齢者向け講座があれば良い」、「回覧を回す手間がなくなった」、「好きな時に確認出来る」などの回答が多かったことから、令和3年度から女性部と青少年部を合体した「未来倶楽部」が「情報化協力隊」の業務を引き継ぎ、ホームページ回覧板が本格的に始動しました。情報発信の流れは、回覧板資料をスキャンしてデータ化し、ホームページに投稿します。記事掲載したことはLINEやメールで事前に登録している会員に通知しています。

 

テーマ③:広域連合自主防災会で災害に立ち向かう
報告者:室蘭市町内会連合会副会長 小林 秀光 氏

 

 室蘭市は、152のうち116町会・自治会が室蘭市町内会連合会に加入。15地区に分かれて活動しています。室蘭市における自主防災の動きは、平成7年1月の阪神淡路大震災の発生以後、室蘭市から市内全域の町会・自治会への自主防災組織結成の呼び掛けから始まり、平成7年4月に輪西地区瑞の江町会が第1号として自主防災組織を結成しました。東日本大震災以降、北海道でも胆振東部地震が発生したほか、地震はもとより台風・強風・水害等の災害発生が頻発する時代を迎え、従来型の自主防災組織だけでは緊急事態時に柔軟な対応を果たせられない状況が生じてきたことから、室蘭市から広域に亘る「地区連合自主防災組織」結成をとの呼びかけがありました。議論を重ね、令和1年8月に第1号の広域自主防災組織「輪西地区連合自主防災会」が結成、現在までに3ヵ所で結成されており、今後も2~3の地区にて結成の動きがあります。現在、室蘭市の自主防災組織の結成率は75%の状況です。
 一方、災害発生時における地域メディアとの情報連携について、災害発生時に住民が情報を得るには、迅速な「情報収集」・「情報共有」・「情報発信・提供」が必要です。一般的な情報入手先としては行政・公共放送がありますが、それを補完する形で、身近な情報が得られる地域メディアの活用が考えられます。室蘭市には、地域メディアとして「FMびゅー」が活動されていることから、広域自主防災組織・行政等と地域メディアの連携・活用を目標に検討を進めているところです。現在は、携帯電話やパソコン、タブレットなど様々なICT機器が普及しています。それらを活用していけば、身近で発生している情報を、住民が地区町会自治会などを経由、あるいは直接「FMびゅー」に提供し、そこで得られた情報を「FMびゅー」が行政災害対策本部と情報共有し、迅速に住民に情報発信を行うことで、行政からの情報発信を十分補完する体制が構築できていくのではないかと考えています。
 受信する住民の側にもICT機器に不慣れだとか、様々な要望もありますが、課題を克服しながら、より身近な情報を住民に発信していける体制を構築していきたいと考えています。 

 

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