平成28年度ブロック別町内会活動研究大会の報告

 
 

大会テーマ 「安心・安全をめざした住民主体の地域づくり」

 
 

 

 

道北ブロック

 

道南ブロック

 

 平成28年度ブロック別町内会活動研究大会が下表のとおり、道内4ブロックにおいて、町内会関係者約840名の参加を得て開催されました。
 大会は、本会からの基調説明、続く、講演はブロック別に講師を招き、「住民主体の地域づくり、地域の絆と支えあい」をテーマにご講演いただきました。
 その後の分科会は、各開催地で選択したテーマ別に、実践報告を受けて協議を行い、最後に分科会報告が行われました。

 

ブロック

開催日

開催地

参加対象地域

参加者

道央

10/20~21

千歳市

石狩・空知・後志・日高

147名

道南

10/12~13

函館市

渡島・桧山・胆振

271名

道東

9/28~29

帯広市

網走・十勝・根室・釧路

266名

道北

10/6~7

稚内市

上川・宗谷・留萌

152名

 

講演の概要 テーマ「住民主体の地域づくり、地域の絆と支えあい」

 

 

◆道央・道東ブロック

 

講師:長谷川 聡 さん
(北海道医療大学看護福祉学部准教授)

 

 介護保険制度の改正によって、住民も地域の高齢者の介護予防の担い手になることを踏まえたうえで、ご自身が暮らす札幌市北区拓北・あいの里地区において設立した「ケア施設町内会」を紹介いただきました。ケア施設町内会は、福祉施設や専門職の方で構成され、住民との合同勉強会や連合町内会と連携した活動により、住民と福祉施設・専門職との交流が生まれ、地域でボランティア活動が盛んになった等、実践的なお話をいたただきました。

▲講師 長谷川聡さん

 

道南・道北ブロック

 

講師:西浦 功 さん
(札幌大谷大学社会学部地域社会学科准教授)

 

 地域づくりでは、制度や設備を整えるよりも、少しでも多くの住民に活動に関わってもらい、巻き込むことが成功の秘訣であること、特に高齢男性には、地域の活動に参加するとともに助けられ上手になっていただくこと等を提言いただきました。さらに、助け合いには、寄り添って話を聞く等、様々な切り口の方法があること、人が好きでよく人に関わろうとする「世話焼きさん」を地域で見つけ、町内会活動に協力していただくことの大切さ等についてお話をいただきました。

▲講師 西浦功さん

 

テーマ別分科会協議の報告

 

 

分科会テーマ① 「町内会の福祉活動について考える」

 

◆道央 ~サロン活動で高齢者の健康を守る

 

 はじめに、千歳市北栄南町内会より、福祉委員会が中心となったサロン活動等について報告がありました。毎週火曜日の介護予防サロンでは、健康体操や食事会を行うほか、毎月のふれあいサロンでは、出前講座やビンゴ大会、カラオケ等で楽しみながら高齢者を見守っています。また、福祉委員会では、高齢者名簿と福祉マップの更新、災害時要援護者の現状把握、ひとり暮らし高齢者等の除雪支援も行い、安心な生活を支えているとの報告でした。その後の意見交換では、地域の福祉施設職員と懇談をして交流をもちたいとの意見が出されたほか、パークゴルフ等に熱心で元気な高齢者が増えたので、町内会の見守り活動に参加していただいているとの事例、老人クラブの活性化に協力して介護予防をすすめているとの事例等が紹介されました。

 

◆道南 ~全ての世代が安心して暮らせる地域に

 

 はじめに、函館市万代町会より、若い世代や高齢者の社会参加を促進する様々な活動について報告がありました。僧侶が終活問題等の相談に乗る「悩み相談」のほか、「高齢者生きがいづくり」として軽運動やカラオケの集まり、菜園での野菜づくりを実施。また、「交流サロン」を2名の当番制で運営し、料理教室や麻雀、食事会等で交流を深めているとのことです。さらに、認知症予防に役立つ問題集や軽運動を取り入れた「脳と身体の活性教室」のほか、地域の大学生に協力をお願いしての餅つきや節分の豆まき、近隣小学校と連携して毎週開いている「放課後クラブ」等、多世代の交流と学びを実践しているとの報告でした。その後の意見交換では、活動の担い手不足で福祉活動に取り組めないとの課題について、民生委員児童委員と連携して活動している事例、参加してくれそうな若い人を常時積極的に探している事例、地域の学校に相談して学生に活動の手伝いをお願いしている事例等が紹介されました。

 

◆道東 ~住み慣れたまちで誰もが安心して暮らせる地域づくり

 

 はじめに、帯広市共愛町内会より福祉部の取り組みについて報告がありました。福祉部の活動では、高齢者を対象とした卓球やゲートボールなどのクラブ活動の充実はもちろん、子どもたちが安全に遊べるように、町内にあるちびっこ広場の定期的な整備点検のほか、遊具は5年以内に新しいものにしているとのことです。また、町内会のある西帯広地区で結成された「人にやさしいまちづくり推進協議会」についても紹介がありました。この協議会は、高齢者や障がい者が住み慣れた地域で安心して暮らしていくことへの理解と普及をはじめ、福祉施設や教育機関、町内会による地域連携と交流を目的に設立されたものです。その後、地域包括ケアの仕組みについて、行政から町内会への説明や対応についての情報交換が行われ、参加者の多くの地域ではあまり進んでいない状況が確認されました。

 

分科会テーマ② 「町内会の防災活動について考える」

 

◆道央 ~公的な救助に頼らず自主防災活動を

 

 はじめに、千歳市町内会連合会より、町内会や行政、自衛隊、防災関係機関等が参加して毎年行われている総合防災訓練について報告がありました。訓練では、倒壊した建物や土砂に埋まった車からの救出訓練、応急処置訓練等を通じて、災害時に公的な救助が来る前の住民による自主防災活動の重要性を学んだとのことです。さらに、別会場では、子どもを対象にした薪割りや簡易炊飯、土のう作り等の体験型訓練を行ったとの報告でした。その後の意見交換では、役員の高齢化のため災害時の対応が心配との課題について、防災活動に子どもと親の参加を促す、住民に防災意識向上のPRが必要との意見が出されました。また、災害時には携帯電話がつながりにくいのでトランシーバーが良い連絡手段となるとの意見、避難所ではなく親戚や知人のもとへ避難する方も多いので、事前に行政や町内会に避難先を申告できるようにしてはどうか等の意見が出されました。

 

◆道南 ~地域みんなで要援護者を支援

 

 はじめに、函館市高丘町会より、災害時の避難支援、防災協定等について報告がありました。町会では、高齢者へのアンケートで67名が災害時に援護を必要としているという結果を受け、介護士や警察OB等を含む住民164名を支援者として名簿を作成。町内地図に要援護者と支援者の自宅に印をつけ、役員で情報を共有しているとのことです。さらに、福祉施設等との防災協定を結び、避難者の一時受け入れ、緊急時の人的派遣等で相互協力したうえ、福祉施設と合同の防災避難訓練を実施したとの報告でした。その後の意見交換では、避難所となる学校の鍵をダイヤル式にして、災害時は住民が避難所を開錠できるようにした事例、行政が助成をして自主防災組織の立ち上げを支援している事例、防災ラジオを各家庭に安価で提供している事例等が紹介されました。

 

◆道東 ~安心して暮らすために災害に備えた対応を確認

 

 はじめに、大樹町双葉町町内会での防災活動の取り組みについて報告がありました。町内会では、災害時に備えて、災害対応の手引きの作成や避難経路と避難場所を確認したほか、行政と協力して実施した防災講習会では、非常食の試食や消火器の取り扱いを学んだとの報告がありました。全体を通して、個人情報の管理の難しさについて意見が多くあり、個人情報の取り扱いには、町内でルールを決めて管理することや信頼関係の構築が大切であることが確認されました。

 

◆道北 ~黄色いハンカチは避難済みの目印

 

 はじめに、稚内市こまどり町内会より、自主防災活動の取り組みについて報告がありました。役員会で災害時の町内会の対応に必要なことを話し合い、行政の協力のもと、土砂災害研修や災害図上訓練(DIG)、炊き出しの研修会や避難済みの目印を玄関先に掲げる「黄色いハンカチ」等に取り組んできました。さらに、今後の取り組みとして、日ごろから顔の見える関係づくりのため、町内会行事への積極的な参加を呼びかけることや近隣の町内会との連携も考えているとの報告がありました。その後の意見交換では、今後の防災活動に活かすため、避難訓練を行う際の道路使用申請の方法のほか、防災訓練でより多くの参加を促すために、訓練参加者の年齢層や開催日時等の情報交換が行われました。

 

分科会テーマ③ 「町内会の育成について考える」

 

◆道央 ~中学1年生の町内会役員が活躍

 

 はじめに、千歳市白樺町内会より、中学1年の女生徒の青少年体育部副部長就任について報告がありました。この女生徒は、小学校で児童会副会長も務めた経験があり、優しくて面倒見が良い性格のうえ、以前から町内会行事に積極的に参加していたとのことです。町内会では役員の高齢化が課題で、会長が女生徒に役員を打診したところ「はい、やります」と即答してくれたとのことでした。就任後は、ラジオ体操のリーダーとして、かわいらしいPR看板を作り、同級生に声をかけ参加を増やすことに成功し、女生徒の活躍は新聞やテレビで全道に紹介されたとの報告でした。その後の意見交換では、集合住宅で町内会加入を戸別にお願いしても断られることが多いので、管理会社や管理組合と話し合い、入居者に町内会紹介のパンフレットを配布して町内会費を自動引き落としにした事例、新規入居があればすぐに町内会の説明に伺い、全世帯加入を維持している事例が紹介されたほか、人口減で維持管理が難しくなった町内会館について、複数町内会での共同管理等の解決策が話し合われました。

 

◆道東 ~加入促進は関係機関と協力しながら

 

 はじめに、帯広市大和第二町内会より、町内会の交流事業について報告がありました。町内会では、会員同士が楽しく親睦する「ニコニコ和の会」やパークゴルフ大会の開催、花いっぱい活動のほか、子どもたちの見守り活動も行っているとのことでした。町内会活動をすすめる上での悩みとして、町内会役員の担い手不足や町内会行事への参加が減ったことがあげられました。その後、町内会加入促進について意見交換が行われ、マンション管理者の協力のもと、家賃とあわせて町内会費を納めてもらっている事例紹介のほか、宅建業者と連携し、大学生や若者を対象に町内会加入を呼びかけている事例が報告されました。

 

◆道北 ~声かけ・意見交換で町内会の活性化につなげる

 

 はじめに、稚内市恵比須町内会から、町内会の活性化に向けて実施した「あすへの集い」について報告がありました。この「あすへの集い」は、町内に住んでいる20代~40代の若い世代を対象に、町内会の役員が参加の声かけを行い、当日は、軽食を用意し、カラオケやゲーム等を交えながら、町内会役員と若い世代が自由に意見交換を行ったとのことです。その結果、数年間中断していた町内会の盆踊りを再開することができ、さらには、この集いをきっかけに、新たに5名の町内会役員が誕生したとのことです。その後の意見交換では、あいさつからはじめて、顔見知りになり町内会行事の参加を呼びかけている事例のほか、「まちの声」を実感してもらうために、行政職員への町内会活動参加の積極的な呼びかけをしている事例等が紹介されました。

 

分科会テーマ④ 「町内会の環境・衛生活動について考える」

 

◆道南 ~生ごみの水切りを徹底してごみを減量

 

 はじめに、函館市町会連合会より、家庭ごみの減量について報告がありました。函館市では、燃やせるごみの3割以上が生ごみで、そのうち8割が水分のため、ごみの減量の要は生ごみの水きりとして、水切り器具を行事の際に無料配布しているとのことです。さらに、生ごみを出さない工夫として、食材を買いすぎない、食材は最後まで使い切る、作り過ぎず食べ残さない等の啓発をしているとの報告でした。その後の意見交換では、予算をかけずに廃材を利用してごみ収集所を作っている事例、生ごみ減量の講習会を年数回実施し、目に見える減量につながった事例、生ごみを堆肥化して家庭菜園で利用している事例等が紹介されました。

 

◆道北 ~地域をきれいにふれあいと成功体験を通じて

 

 はじめに、稚内市白樺町内会より、小学生との共同清掃活動である「クリーン作戦」について報告がありました。この「クリーン作戦」は、小学生に呼びかけをしてもらう等、町内会役員や会員とのふれあいの場にもなっているとのことです。清掃の最後には、町内会役員より「今日は一緒に町内をきれいにしてくれてありがとう」とメッセージを送り、子どもたちの成功体験を通して、心の成長につなげている事例が紹介されました。さらに、小中学生が高齢者宅へお弁当を届ける「ふれあいランチ」の事業も実施しており、子どもたちの育成にも役立てているとのことです。その後の意見交換では、ごみステーションの管理について、14種類のごみの分別を30年かけて定着させた事例や、ごみステーションの設置ではなく、各個人宅前でごみ収集をしている事例等が紹介されました。

 

close