令和元年度ブロック別町内会活動研究大会の報告

 
 

大会テーマ 「共に生きる地域づくり」

 
 

 

 

道北ブロック

 

道南ブロック

 

 令和元年度ブロック別町内会活動研究大会が下表のとおり、道内4ブロックにおいて、町内会関係者約650名の参加を得て開催されました。
 大会は、本会からの基調説明のほか、講演はブロック別に講師を招き、「地域の安心・安全をめざして」をテーマにご講演いただきました。
 その後の分科会は、各開催地で選択したテーマ別に、実践報告を受けて協議を行い、最後に分科会報告が行われました。

 

ブロック

開催日

開催地

参加対象地域

参加者

道央

9/10~11

倶知安町

石狩・空知・後志・日高

88名

道東

9/19~20

釧路市

網走・十勝・根室・釧路

160名

道南

10/23~24

北斗市

渡島・桧山・胆振

234名

道北

11/22~23

富良野市

上川・宗谷・留萌

111名

 

講演の概要 テーマ「地域の安心・安全をめざして」

 

道央ブロック

講師:小町 美穂 さん
(一般社団法人北海道建築士会理事/被災地応急支援委員長)

 

 胆振東部地震における被災地での被害状況や二次災害を防ぐための建築物の被災度の判定のほか、寒冷地における応急仮設住宅の様子などをお話いただきました。また、道内で想定される地震の規模や建築物の被害などを踏まえて、実際に災害が起きた時のために、どのように備え、対応するのかを建築士として専門的な立場からご提言いただきました。

 

道東・道南・道北ブロック

講師:松本 行真 さん
(近畿大学総合社会学部准教授)

 

 津波被災から復興期までの取り組みとして、福島県いわき市薄磯区の事例をもとに、被災地におけるボランティア等の外部支援者との関わりのほか、普段からの地域のコミュニケーションのあり方について、先生の体験談を交えながらご提言いただきました。

 

テーマ別分科会協議の報告

 

 

分科会テーマ① 「町内会の福祉活動について考える」

 

◆道央 ~生きがい育む福祉ボランティア活動~

 

 はじめに、倶知安町琴和町内会より、町内会で実施している福祉ボランティア活動について報告がありました。琴和町内会の〝ちょっとしたボランティア〟の活動「ちょぼら」では、冬の間除雪困難な高齢者宅の除雪支援と安否確認を実施。「倶知安町雪はねボランティアツアー」では、札幌からボランティアの人たちと地元100名以上で雪かきを通したふれあい交流についての報告がありました。また、「虹の会」の活動として、町内会員による特別養護老人ホームの花壇の手入れや車いすの清掃のほか、入居者との食を通した交流の様子や、町内会の老人クラブが主宰している「ひまわりの会」でのサロン活動など、地域全体の取組みなど無理をしない福祉活動の様子の報告がありました。その後の意見交換では、参加者から各地域のサロン活動や見守り活動について事例報告がある中、参加者からは、琴和町内会の事例紹介が大変参考になったとの声が多く、今後、地域住民にとって生きがいになるような〝ちょっとしたボランティア〟活動を無理せず取り組んでいくことが確認された分科会となりました。

 

◆道東 ~引きこもり対策としてのサロン活動~

 

 はじめに、釧路市春採下町地区連合町内会より、引きこもり対策としてのサロン活動について報告がありました。
 春採下町地区連合町内会では、地区連合会主催の「いきいきサロン」を開催していましたが、会場までの道のりが遠く、参加が困難であることや内容のマンネリ化により参加者が減少したことを受け、連合町内会主催の「いきいきサロン」を廃止し、町内会独自でサロン活動に取組むようになりました。中でも、第一曙町内会は、婦人部と福祉厚生部が中心になり、近所のお庭のお花を見せて頂きながら軽く談笑する「お庭鑑賞会」や健康維持と認知症予防を目的として、工作物や手芸、脳トレなどをサロンに取り入れているそうです。
 その後の意見交換会では、各地のサロン活動の取組みや様々な活動内容について、サロンの会場が遠いと、サロンに行きたくても行けないことから、近くの会場が好ましいという意見や、自治会、社会福祉協議会、民生委員との連携した取組みについての報告がありました。また、高齢者の見守り、支援活動の取組みについてのお話もありました。
 そして、サロン活動では、引きこもりをなくしたいことや安否確認などを行い、いきいきと活動できる場であることから、これからもこの活動を大切にしていく必要があるということを再確認しました。そして、行きたくても行けない、参加できない人には、参加してもらうにはどのような活動をするとよいか、これからも多様な取組みが必要との声が多くありました。

 

◆道南 ~サロン活動で互いの顔が見える暮らしを実現~

 

 はじめに、北斗市茂辺地町内会で実施している「わくわくサロンひだまり」の活動について報告がありました。
 地域で互いの顔が見える暮らしを実現するために「わくわくサロンひだまり」を発足。このサロンは、町内会役員と民生委員児童委員や老人クラブ等で構成されており、元気に安心して暮らすための健康を意識したリハビリ教室やクリスマス会、医療講演のほか、就活セミナー等も開催しているそうです。さらに、国際交流のつどいとして、北斗市で実施している海外交流事業でホームステイしている外国人を地域に招待し、浴衣を着ての盆踊り大会に参加するなど、日本文化の発信にも一役買っています。参加者からは、サロン活動の運営費についての質問には、会員からの月200円の会費のほか、社会福祉協議会からの補助とバザーでの収益で運営しているとの回答がありました。
 その後の意見交換では、各地域でのサロン活動の取組み状況について報告があり、地域でサロン活動を運営するのが難しく一旦休止している。年々サロンの参加人数が減っているなどサロン活動運営に苦労している声が多くありました。

 

◆道北 ~サロン活動を通して地域のふれあいを~

 

 はじめに、富良野市連合町内会協議会と富良野市社会福祉協議会より、富良野市麻町で実施している麻町ふれあいサロン活動について報告がありました。サロンは平成14年に試行錯誤の中で開始、月1回第三水曜日に開催して、現在17年目を迎えています。当初は参加者9名、サロンの運営が11名でしたが、今では運営も含めて約70名が参加しています。サロンの経費は個人負担が200円でしたが、より充実したサロン運営のため、今年から300円を負担、残りの経費は社会福祉協議会の助成で行っています。サロンでは手作りの昼食、体操・健康教室、認知症予防の教室や小学生とのふれあいなど、工夫を凝らした運営を行っています。また、社会福祉協議会は地域づくりの原点が社会参加であることや声かけが万が一の災害救助につながる大事な原点という思いから、サロン活動に取り組んでいる町内会を全力で応援していくとのことでした。
 その後の意見交換会では、各地域のサロン活動について情報交換があり、町内会の規模や体制の違いから効率的な活動ができていないことや、行政や社会福祉協議との連携の必要性等についての報告や意見が多く述べられました。

 

分科会テーマ② 「町内会の防災活動について考える」

 

◆道央 ~いつ起こるか分からない災害に備えて~

 

 はじめに、倶知安町樺山町内会で取り組んでいる災害時に必要な情報をまとめた防災データベースの作成と樺山地区防災計画策定委員会の取り組みについての報告がありました。防災データベースの作成では、住民の安否確認をスムーズに行うために、町内会の全世帯を調査対象に戸別訪問を実施して、要援護者の把握や避難誘導に必要な情報を収集し、データに蓄積しました。また、災害時に備えるため、樺山地区防災計画策定委員会を立ち上げ、災害時の避難経路などを示した防災計画の整備に取り組んでいるとの報告がありました。さらに、災害時に住民を孤立させないために、広報紙を通して防災の必要性の呼びかけを行い、町内会加入にも繋げているそうです。その後の意見交換では、参加者から、各地域で実施している防災の取り組みの報告がありました。昨年度の胆振東部地震の教訓を踏まえ、住民一人ひとりが防災に対する意識を持ち、災害時に備えたいと改めて確認がされた分科会となりました。

 

◆道東 ~災害に強いまちづくりを~

 

 はじめに、浜中町自治会連合会より、浜中町の行政における防災活動について説明がありました。
 浜中町では、防災会議を設置、防災計画を策定して活動を進めています。津波避難マップを作成し、津波浸水予想範囲や避難場所を記載して、町民全戸へ配布。さらに家庭用防災行政無線も全戸に配布し、町からの情報を受信できるようにしています。また、非常食等の防災備蓄品を整備し、企業と災害時協定を結ぶことで物資援助を受けられるようにしています。毎年5月に津波防災避難訓練、秋にはDOHUG等の図上訓練を実施しているとのことです。
 続いて、自治会における防災活動について、浜中町で行っている津波防災避難訓練の参加や避難者名簿の作成、避難所運営などの訓練を行っていることや自主防災組織を結成しているとの報告がありました。
 その後の意見交換では、自主防災組織と行政の連携、町内会での情報共有のあり方、個人情報の取り扱いについて留意しながら進め、高齢者の支援などについては日ごろからのつながりが大事であることや民生委員との連携が欠かせないことについて意見や報告がありました。
 各地域の防災・減災に向けての対策が多数述べられ、熱のこもった意見交換会になりました。

 

◆道南 ~防災活動を女性の視点から考える~

 

 はじめに、北斗市町会連合会女性部より、連合会で実施している女性の視点から見た防災活動について報告がありました。高齢化社会における町内会活動の果たす役割は大きく、女性部の参画なくして、地域福祉の充実は図れないとの考えから、北斗市町会連合会女性部は平成5年に設立されました。女性部の活動として、防災、ごみの減量化、リサイクルの推進など多岐にわたる活動を展開されています。また、女性ならではの視点から、防災活動の取り組みとして、炊き出し訓練と身近にあるものを活用した応急処置を学びました。炊き出し訓練では、災害救助用炊飯袋(ハイゼックス)を使用して、いつまで続くか分からない避難生活の中、限りある食材で100名を想定した肉じゃがやおにぎりを作ったとのことです。また、一般家庭にあるラップ等を利用したケガの処置について、防災専門官を講師に迎え研修会を実施し、災害時の不安を少しでも解消するのに役立てているそうです。
 その後の意見交換では、昨年の北海道胆振東部地震で被害の大きかった安平町とむかわ町からの参加者から、災害支援のお礼があり、災害時の要援護者支援の体制の見直しについて報告のほか、各地域の防災・減災の事例が多数述べられました。

 

◆道北 ~防災組織づくりの必要性~

 

 はじめに、富良野市春日東町連合会より、防災組織づくりの必要性について報告がありました。富良野市では災害が少ないながらも災害ガイドマップを作成し、万が一、災害が発生した場合でも落ち着いて行動できるように備えています。また、自助努力で自分の身を守ることや共助、地域で助け合うことが必要だが、民生委員や町内会役員のなり手が不足。地域で守るには限界があるとのことから、災害時に参加率が高いサロンを立ち上げ、サロンの中から防災を進めていき、自主防災組織の結成に役立てているそうです。
 その後の意見交換では、共助の仕方や各地域の防災訓練の様子、個人情報の管理などについての意見や報告がありました。災害はいつ起こるかわからない、10年後、20年後かもしれない。それに備えた訓練、組織づくりを繰り返し行うことが大切との考えが出されました。

 

分科会テーマ③ 「町内会の育成について考える」

 

◆道央 ~地域の絆をはぐくみ、地域で支えあう社会づくり~

 

 はじめに、倶知安町町内会連合会から、倶知安町町内会加入促進条例の制定に至った経緯についての報告がありました。倶知安町では多くの単位町内会での加入率が下がり、あわせて役員の担い手不足である現状を踏まえ、町内会だからこそできる、ごみステーションの管理や除排雪のほか、細やかな日常の対応があるとして、倶知安町と協議の結果、道内初の町内会加入促進条例の制定に至ったとの報告がありました。また、条例に基づき、アパートの管理会社等による町内会加入促進がすすめられており、現在は倶知安町へ町内会加入促進のパンフレット作成を要望しているとのことです。その後の意見交換では、倶知安町の外国人居住者や外国人観光客の増加への対応について多くの質問があり、外国人観光客へのコミュニケーションについては倶知安町の観光協会を通して対応していることや、アパートの管理会社のオーナーが外国人の場合、行政で対応している等の回答がありました。そのほか、行政職員が町内会活動に参加しないことについての意見等があり、町内会の役員不足についての議論がなされました。

 

◆道東 ~若い世代に参加してもらう町内会づくりのためにできることは~

 

 はじめに、釧路町連合町内会より、町内会の現状と課題について、子どもたちの育成事業、高齢者の見守り、防犯活動、清掃事業等に取り組む一方で、高齢化や役員の担い手問題が大きな悩みであることが報告されました。しかし、その中で毎年、防災訓練、交流会などの行事を企画、運営することは負担だけではなく、役員全員で行うことで継続する力になっています。
 また、各町内会が工夫を凝らし、会員の交流親睦をはかる場として町内会行事を企画し、楽しく交流することが町内会の役員を引き受けてくれるきっかけになっているそうです。
 町内会未加入世帯には役員が訪問し、町内会への加入を働きかけることはもちろん、町内会の活動や年間行事、防犯灯や資源ごみステーションの維持管理を行っていること、町内会費が有効に使われていることを簡潔に紹介したパンフレットを投函することで、「加入してみようかな」というきっかけを作りたいとのことでした。
 その後の意見交換では、男性ばかりでなく女性が町内会に参加できる環境づくりの必要性や、町内会員の減少に伴った合併問題、外国人居住者の加入促進に向けた取組みについての意見交換、町内会加入率向上に向けた取組みが報告されました。また、町内会の加入促進には行政との連携が必要との意見がありました。

 

◆道南 ~誰もが安心して生活できる環境づくり~

 

 はじめに、北斗市ひまわり町会より、誰もが地域で安心して暮らせる環境づくりとして、災害時に外国人技能実習生も一緒に行った避難訓練や意見交換会について報告がありました。昨年の北海道胆振東部地震発生の際に、町会に住んでいる外国人技能実習生が、誰とも連絡が取れずに不安になったことから、町会で実施している避難訓練に、外国人技能実習生にも参加をしてもらいました。この参加をきっかけに、町会で実施している児童との交流会やもちつき大会、夏まつりへの参加のほか、母国との生活習慣の違いやゴミ出しについて「安心安全ミーティング」も開催し、日ごろから交流を深めるきっかけとなったそうです。
 事例紹介後には、町会に居住する外国人への呼びかけについて質問があり、民生委員が把握していることから、呼びかけ等に協力してもらっているとの回答がありました。また、ひまわり町会の加入率が92・6%であることから、どのような加入促進をしているのかという質問では、北斗市町会連合会、北斗市、宅建協会との三者協定に基づき、情報提供を受け、町会未加入世帯に対し、会長と役員とで根気よく加入促進のための訪問をしているとの回答がありました。担い手不足などの問題もありますが、改めて地域に住むすべての人が、互いに支えあい、安心して暮らせる地域づくりの大切さが確認されました。

 

分科会テーマ④ 「町内会の環境・衛生について考える」

 

◆道北 ~「分ければ資源、混ぜればごみ」ごみ分別に大きな関心~

 

 はじめに、富良野市より富良野市のごみリサイクルについて報告がありました。富良野市のごみリサイクルは旧埋立処分場の閉鎖問題をきっかけとして、「分ければ資源、混ぜればごみ」、「廃棄物分けて生まれる新たな資源」を合言葉に分別による資源化が始まり、現在の「燃やさない・埋めない」のごみリサイクル基本理念のもと、市民、事業者、行政が協働し、豊かな自然と人が共生するまちづくりを進めてきました。その結果、生ごみをはじめとした3種の分別から、今では14 種の分別になり資源化率も95%になっています。生ごみの分別を開始した当初は、市民生活の中に「ごみ分別」という新たな作業を組み込まなくてはならず、多くの市民が「ごみ分別」を面倒なことと感じていましたが、手間をかけた分別が生活環境の場をカラスなどから守り、堆肥化された生ごみが基幹産業である農業に活かされ、清潔で住みよい生活環境をゆるぎなく続けられた「分別」という協力により築き上げたことは大きな宝、誇りであるとの声があがっており、今後も市民と行政の協働による取組みを大切に育んでいきたいとのことでした。
 その後の意見交換では、ごみの分別や種類、市民への説明方法など、ごみ問題に関する様々な意見や事例の紹介があり、各地域でのごみ問題について話し合いました。

 

close