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シリーズ⑮ ~町内会におけるふれあいサロンのすすめ方・
悪質商法等の被害防止ネットワークづくりを学ぶ~ |
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平成26年度町内会活動実践者研修会は、平成26年8月1日、札幌市において、道内各地から117名の参加を得て実施されました。
本年度は、地域住民の参加はもとより高齢者自らも運営に参加して高齢者の生活を支えあっていけるような「町内会におけるふれあいサロンのすすめ方」と「悪質商法等の被害防止ネットワークづくり」を学びました。
講義① 「町内会におけるふれあいサロンのすすめ方」
講 師 小山 忠弘 氏(ふるさと再生塾 塾長) |
今、北海道の人口が減少しています。その人口の過疎が、まちの活力を失うのではありません。そこに住んでいる人の心のつながりの過疎、絆が薄れていくことが問題なのです。住民がお互いに知恵を出し合って、楽しく生活するための仕組みづくりが、町内会に求められています。さらに、最近は、血縁も地縁も社縁も薄くなってしまい、地域には優しさとぬくもりが伝わる町内会育て、あるいは人育てが問われています。年配の役員の発想で運営する町内会ではなく、若い人達の意見も反映され、町内会活動に若者の出番があるような仕組みをつくることが大事になってきます。誰もが地域で安心して暮らしていける絆をつくることが、まち育て・人育ての基本です。
鹿児島県最南端の与論島では、一度島を出て東京や大阪で働いた若者の多くが島に戻ってきます。先祖や子ども達が大事にされ、中高一貫教育で、人と人とのつながりや支えあいなどの絆が非常に強い島であることが魅力となって、自分の生まれ育った島に戻ってきていると感じました。
私の町内会の公園では、秋になると大量の落ち葉によって、周辺の住民から苦情がきます。その落ち葉を使って何かできないかを考え、子ども達と落ち葉を集めて焼き芋をつくって食べることにしました。公園を管理する市役所の許可を取った後、消防署に相談したら、焼き芋の火を消す時に消火器の扱い方を子ども達に教えることになり、子ども達との交流のほかに防火教育もできました。このように住民同士が知恵を出し合って行政等と連携すれば、新たな町内会活動が可能になります。
今、町内会に必要とされているのは、自分のことは自分でする自助力、助け合う共助力、近所同士が助け合う近助力です。向う三軒両隣の精神を復活させて、せめて、自分の家も含めた6軒くらいは誰がどういう状況で生活しているのか、意思が通じあうようなまちにしていただきたいと思います。個人情報の漏えいが社会問題になっていますが、個人情報保護法は近隣住民の情報を制約するものではなく、命を守るために住民の情報を町内会で活用するのは違反ではありません。
長沼町のある地域では、個人が空き店舗を借りて、地域の子どもや高齢者が自由に出入りしてふれあえるようにしています。そこには卓球も囲碁もあり、子どもも高齢者もぶらっと来て、気軽にふれあえる場が提供されています。今は道内に空き家がたくさんありますので、個人でもこのようなことができます。住民一人ひとりが町内会を育てるために何ができるかを考えましょう。ふれあいサロンは、「絆」という新しい文化をつくる活動で、人と人とのふれあいをつくることは、まちの文化をつくることだと考えてほしいと思います。
高齢者、障がい者、子育て世代、子ども、全ての住民が交流できる場づくり等、ふれあいサロンは、自由な発想でできる活動です。また、ひとり暮らしの高齢者や生活困窮者、閉じこもりの方等との気軽なふれあいを通じて、近隣住民とつながるきっかけをつくり、孤立を防止する活動でもあります。これまで各地で行われてきたふれあいサロンの固定的な考え方にとらわれず、理想論でもよいので、自由な発想で新しいサロン活動を企画してほしいと思います。
講義② 「高齢者に多い消費者被害の現状と被害防止ネットワークづくり」
講 師 塩越 康晴 氏(一般社団法人北海道消費者協会教育啓発グループ主査) |
このネットワークは、地域住民を悪質商法から守るため、被害者の早期発見と被害救済のサポートを目的とした組織です。地域の自治体や警察等が連携して、悪質業者発見のための不審者の通報や住民への情報提供を行い、被害の防止につとめています。
若者の消費者相談は、以前より減少しましたが、高齢者の相談件数が増加し、平成16年には10%だった高齢者の相談割合が、平成24年には30%と急増しており、1件あたりの被害額も増加しています。また、被害者の情報が悪用され「手数料を支払えばお金を取り戻す」という詐欺等の二次被害にあう高齢者も急増しています。
最近多い悪質商法の手口として点検商法があります。認知症の姉妹の家に点検として入り込み、屋根裏に必要のない換気扇等を多数取り付けられ何百万円もの被害にあった事例があります。他には、SF(新商品普及会)商法があります。商品の説明会として人を集め、初めに安価な物を無料で配り、参加者が興奮して判断力が鈍ったところで、高額な布団等の商品を契約させるという手口です。
①通報 |
不審な人が町内の個人宅を訪問したり、通行人にしつこく勧誘しているのを発見した場合、すぐ役場の担当窓口へ通報する。
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②調査 |
役場の担当窓口から地元の警察を通じて、職務質問を行い、悪質業者か否かを調べる。
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③牽制 |
悪質業者と考えられる場合は、訪問の際に「販売目的を告げているか」を訪問宅に聞き取り、道条例や特定商取引法に抵触しているかを調べ、業者を牽制する。
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④周知 |
無理矢理契約させられた住民は、速やかに役場に申し出るよう、防災無線や回覧板、町内スピーカーなどで呼びかける。
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⑤救済 |
住民が声を掛け合い、被害者発見に努め、被害者を発見した場合は役場に連れて行き、速やかにクーリング・オフ(※)の手続きを取ってもらう。
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⑥連携 |
これらの通報を行える住民組織(ネットワーク)を作り、日頃から不審人物に注意するよう呼び掛け、住民パワーで消費者被害を防止する安全な町をつくる。 |
※クーリング・オフ・・・訪問販売等で契約した場合、8日以内であれば無条件で解約ができる制度。解約したい旨の文書を簡易書留等で送付すれば、公的に解約ができる。
住民同士が親密な関係であれば、近所の高齢者宅に見知らぬ業者が長く滞在していたら、電話をかけて悪質業者であることを確認したうえで助けに行くことができます。もし契約させられていた場合は、役場の担当窓口を案内して解約の手続きを促す等が考えられます。
士別市では、被害防止のネットワークにコンビニやタクシー会社も入り、ポスター掲示や悪質業者の車の通報等で協力いただいています。この取り組みは、町から悪質業者を追放するネットワークとして、全国から注目されています。
また、月形町では、布団の訪問販売をしていた悪質業者が、旭川方面に北上したとの通報により、苫前町での被害を未然に防ぐことができました。さらに、その業者が向かった雄武町、常呂町にも情報が入り、役場がすみやかに対応したため、被害はここでも未然に防ぐことができました。業者は「もう北海道では仕事をしない」と捨て台詞を吐いて町から出て行ったそうです。このように、ネットワークの情報網により、悪質業者の動きを封じ込めることができます。
現在、地域消費者被害防止ネットワークは、50の市町村で組織されていますが、これを道内全179市町村に広めようと活動しています。
また、国民生活センターでは、悪質商法の手口と対策を紹介した「見守り新鮮情報」を発行しています。これは国民生活センターのホームページから無料で入手できるので、回覧板に付けてまわす等活用して、日常的に被害防止を呼びかけていただければと思います。また、日頃の町内会による見守りのなかで、不審な業者を見かけたら住民同士声をかけあって、自分たちで悪質業者から町内を守るという意識をもっていただければ、ネットワークは本当に有意義なものになると思います。
演習では11グループにわかれ、ふれあいサロンの企画や活動内容を話し合い、年間サロン計画を模造紙2枚にまとめました。
1.グループ毎にお互いの自己紹介
2.司会、書記、発表者の互選
3.司会役の進行で話し合いスタート!
4.ポストイット(付箋)に町内会のサロン活動に
関する幅広い考えを何でも自由に記入
5.模造紙に企画案を記入
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一枚目…4月から翌年3月までの事業名と実施体制
二枚目…ある月の具体的展開事例
① グループ名 ②事業名 ③日時 ④会場
⑤参加対象 ⑥費用 ⑦活動内容 ⑧実施体制 ⑨PR方法 |
6.発表 |
模造紙に記入された年間サロン計画を掲示し、グループ毎に発表者が内容や意図を詳しく説明しました。 |
7.講評 |
各グループの発表に対して講師が、アドバイスをしました。 |
どのグループも和気あいあいとして、様々な意見と知恵を出し合っていました。これを繰り返していけば新しい発想が生まれてきます。地域には地域の良さがあり、様々な人たちと連携してその力をどう活かすかという発想をもてば、町内会活動はとても活性化していくと思います。
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