平成28年度町内会活動実践者研修会報告

シリーズ⑰ ~町内会における見守り活動のすすめ方~

 

 

 平成28年度町内会活動実践者研修会は、平成28年8月5日、札幌市において、道内各地から109名の参加を得て実施されました。本年度は、誰もが安心して暮せる地域をめざして、町内会における見守り活動のすすめ方を学びました。

 

実践報告「地域の見守り活動について」をテーマに4団体から報告をいただきました。

 

◆町内会

 

 清田区新平岡町内会総務部長の芳賀正俊さんから、「高齢者見守り事業」について報告いただきました。はじめに、個人情報取り扱いの研修を受けたうえで、社会福祉協議会から名簿の提供を受け、見守り対象とした75歳以上のひとり暮らしの方等のご自宅に印をつけた地図を作成しました。その後、町内会役員や班長、民生委員児童委員等で分担しての見守り訪問を開始。訪問時には、詐欺被害防止のチラシや町内会行事の案内を持参し、交流を図っています。また、3カ月ごとの活動報告会で、情報を共有し、一人で抱え込まずに無理のない見守り活動を継続しているとの報告でした。

 

◆民生委員児童委員

 

 富良野市民生委員児童委員協議会の松田尚美さんから、「支え合いマップを使用した見守り活動」について報告いただきました。近所の住民が集まって情報を出し合い、住宅地図に要援護者と周辺住民の関わり合いを線で結ぶ「支え合いマップ」を作成し、関わり合いの線が引けない人は「気になる人」として重点的に見守っているほか、災害時の避難支援にも役立っているとの報告でした。

 

◆老人クラブ

 

 帯広市老人クラブ連合会で友愛委員会委員長を務める遠藤雅美さんから、「友愛活動による見守り訪問」について報告いただきました。友愛委員会では、帯広市内の各単位老人クラブで2名の推進員を決め、ひとり暮らしの高齢者、高齢者夫婦等を訪問し、安否確認や話し相手となる活動を行っています。訪問は月1回以上、複数人で行い、友愛活動記録票に様子を記録・集計。3ヵ月ごとに各地区で学習会・親睦会を行い、情報の共有と推進員の交流を図っているとの報告でした。

 

◆社会福祉協議会

 

 千歳市社会福祉協議会の舩尾圭一さんから、「地域見守りネットワーク事業」について報告いただきました。千歳市社会福祉協議会では、新聞販売や郵便等の配達業務を行う事業者と連携し、配達先の高齢者宅等で異変に気づいたら、社会福祉協議会へ連絡してもらうネットワークを構築しました。これにより、高齢者等を日ごろからさりげなく見守り、問題の早期発見、対応を図っているとの報告でした。

 

講義テーマ「町内会における見守り活動のすすめ方」
講 師 播本 雅津子 さん(名寄市立大学保健福祉学部看護学科教授)

▲講師の播本雅津子さん

 

◆見守りは困っている人を気にかけることから

 

 私は大学で保健師教育をしており、保健師になったら、すぐに担当地区の町内会長へ挨拶に行きなさいと学生に教えています。新人の保健師は家庭訪問の教育を受けていますが、地域とのつながりや活動経験がないので、町内会の皆さんに、若い保健師にぜひ協力していただければと思います。
 見守り活動は、地域の結びつきが薄くなり必要性が高まったという一方で、昔より国民の生活水準が向上し、健康問題や困りごとを抱える住民をまわりが気にかけるようになったからこその活動ともいえます。介護保険の制度とあわせ、そのような方々を地域で見守っていこうという動きであり、社会が良くなってきていると考えましょう。

 

◆高齢夫婦二人暮らしも見守りが必要

 

 昔は、水汲みや薪割り等の家庭内労働が大変でしたが、今はひとりで楽に暮らせるようになり、少子化がすすむ中、ひとり暮らしの高齢者が増えています。ひとり暮らしの高齢者の見守りは当然必要ですが、高齢夫婦二人暮らしの場合でも、お一人が病弱の世帯は負担が大きいので見守りが必要です。また、定年退職した方には、ぜひ町内会役員になっていただき、家族にも心配をかけず、自分も健康に暮らせるように活動していただけたらと思います。

 

◆積極的に外出してもらえる工夫を

 

 高齢化率の高い地域を悪く捉えがちですが、高齢者は自宅周辺に居る時間が長いため、安定したコミュニティだとも考えられます。北海道は農林水産業に関わり体がしっかりしている方が多いので、退職後も町内会活動や庭いじりで体を動かせば、健康寿命を伸ばしていけます。また、高齢者にとって、生活の中でいかに足腰を鍛えるかがとても大事なので、見守り訪問で健康を確認した後は、積極的に外出してもらう方法を考えましょう。

 

◆前向きな声のかけ方

 

 高齢者の交通事故は、自宅から800メートル以内が多いそうです。よく知らない場所は、信号を守り横断歩道を渡りますが、近所では「ここは斜め横断しても大丈夫」等のマイルールで行動してしまう傾向があります。これに対して「ここを斜め横断したらダメ」と言うのではなく、「あちらの横断歩道を一緒に渡りましょう」と、前向きな声のかけ方を身に付けましょう。見守られる方も活動する方も幸せに暮らすのが見守りの目的なので、声のかけ方等も工夫するとうまくいきます。また、高齢者に運転免許の返上を勧めるときは、「もう運転をやめなさい」と言うよりも、免許を返上した方に町内会で卒業式をやると良いと思います。警察署長等から証書を渡され「おめでとう」と言われたら悪い気はしないのではないでしょうか。

 

◆見守られ上手になりましょう

 

 60代から見守り活動に参加していると、上手に見守られる70代80代になれます。上手に見守られる方が多くなると10年後の見守り活動がとても楽になります。見守られる年齢になっても毎朝ラジオ体操に行く等して、元気なことを周りにアピールできるような高齢者になれたら良いと思います。

 

◆見守り活動のコツ

 

 見守り活動では、まず住民同士が顔見知りになり、日ごろから声をかける練習をしましょう。また、おそろいのジャンパーや帽子を被って見守り活動をすると、巡回の防犯効果、見守られる方の安心感、活動する方の一体感につながります。また、困っている人を探すのではなく、お互いが元気であることを確認する感覚で見守りましょう。私は学生に、気になる人がいたら、その人が困っているのかを考える前に、相手の顔を直接見て元気なことを確認し、自分の心配を解消するようにと教えています。安否確認をした結果、元気で取り越し苦労だったとしても笑って済む話です。

 

◆声かけでは雑談を

 

▲各地域の見守り活動について話し合い

 見守りで声をかけるときには、質問をするより、雑談をしたら良いと思います。「お元気ですか?大丈夫ですか?」と聞いたら、「元気です。大丈夫です。」と答えられて話が終わってしまいます。相手が話さないときは、まずは自分のことを話しましょう。そうしていると相手も自分のことを話してくれるようになります。コミュニケーションのコツをつかんで、皆さんの地域での見守り活動に役立てていただきたいと思います。

 

 

パンフレット「はじめませんか?見守り活動」を発行しました(平成28年9月)

 

 本研修会の内容をまとめたパンフレットを発行しました。このパンフレットには、見守り活動の手順やポイント、コミュニケーションのコツや活動事例等が掲載されています。右の画像をクリックすると、パンフレットのPDFデータをご覧いただけますので、ご活用ください。

 

 

 

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