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シリーズ⑲ ~町内会の安心・安全マップづくり~ |
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平成30年度町内会活動実践者研修会は、平成30年8月7日、札幌市において、道内各地から163名の参加を得て実施されました。本年度は、住民の状況を地図に集約し、日ごろの福祉活動に活用する町内会の安心・安全マップづくりを学びました。
実践報告 災害対策・地域福祉の取組み
北区北王第七町内会長の鈴木誠さんから、防災マップや福祉マップの作成のほか、町内会の防災活動・福祉活動について報告いただきました。
北王第七町内会では、防災の取組みとして、参加者が議論をしながら大きな地図に避難所・危険箇所・避難経路などを書き込む災害図上訓練(DIG)、避難所での避難者受け入れ・居住スペースや簡易ベッドづくり・炊き出しを体験する避難所運営訓練などを実施しています。さらに、札幌市から避難行動要支援者名簿の情報提供を受けたうえで、要支援者と支援協力者を組み合わせ、災害時の避難計画を制定しました。
また、福祉の取組みとして、町内会に福祉部を創設し、見守り安否確認、居場所づくりのサロン、日常生活支援などの活動に取組んでいます。日常生活支援活動では、支援者に感謝の気持ちを表し、支援者の経済的負担を軽減するために、感謝ポイント券制度を導入。住民へのアンケートでニーズが多かった、除雪、ゴミ出し、買い物手伝い、病院付き添いなどの支援活動についてそれぞれポイント数を定め、感謝ポイント券を利用して支援を受けられる仕組みをつくりました。感謝ポイント券制度により、明確に感謝の気持ちを伝えられるため、要支援者は依頼をしやすくなり、支援者のやりがいにもつながったとの報告でした。
関係団体報告 民生委員児童委員と個人情報
北海道民生委員児童委員連盟主査の馬川友和さんから、民生委員児童委員と町内会などの関係機関との情報共有のあり方について報告いただきました。
民生委員児童委員は、地域住民のなかから選ばれ、自らも住民の一員という性格をもって、見守りや相談活動を行っています。非常勤特別職の地方公務員であるため、個人情報保護法は適用されない一方、住民から受けた相談内容や個人情報、プライバシーに関することについて守秘義務が課せられています。
民生委員児童委員は、この守秘義務のため、本人の同意を得ることなく町内会に住民の個人情報を提供することはできません。しかし、住民の支援という目的の範囲内で、連携が必要と想定される機関・団体等への最小限の個人情報の提供について、あらかじめ本人の了承を得ておく「包括的同意」という方法によって、町内会とも情報共有ができる可能性があります。
包括的同意の事例としては、鷹栖町の「お互い様づくり行動計画」があります。この行動計画では、見守り活動の体制整備のため、鷹栖町役場職員が、要援護者を訪問して見守り活動についての説明をしたうえで、包括的な情報共有の同意書を取り、町内会、民生委員児童委員、社会福祉協議会などが情報を共有し、日ごろの見守りに役立てています。
このような情報共有の取組みのほか、本日の研修会で学ぶ「住民支え合いマップづくり」を町内会と民生委員児童委員が一緒に取組むと、より効果的であるとの報告でした。
講義・グループワーク
テーマ「町内会の安心・安全マップづくり
~住民支え合いマップによるご近所福祉のすすめ~」
講 師 木原 孝久 氏(住民流福祉総合研究所長) |
支え合いマップづくりは、福祉のまちづくりのために、住民の関わり合いの実態を住宅地図に記入し、地域にどんな福祉課題があるかを抽出して、これからどのように取組んだら良いかを住民自身で考えるものです。
下図の支え合いマップの例のように、ひとり暮らしの高齢者などの要援護者と地域住民がどのように関わっているかを線で引いていきます。たくさんの線がひかれている高齢者は安全といえますが、線の少ない方は見守りが不足している可能性が高く、対応を考える必要があります。
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▲研修会では、マップづくりの様子を寸劇で再現。ご近所の情報を出し合い、マップに書き込む。 |
人々は、お互いの顔がみえる50世帯程度の「ご近所」の範囲でふれあって生活しているので、マップづくりは、およそ50世帯のご近所ごとに実施します。この地域の5名程度の住民の方に集まっていただき、井戸端会議のようにお互いがもっているご近所の情報を出し合いましょう。
その結果を拡大した住宅地図に記入し、関わり合いの線が少ない「気になる人」を見つけ出すとともに、買い物が不便、災害に弱い、交通危険箇所などの地域の「気になること」を探し出していきます。
ご近所での福祉を実現するためには、見守りの人材を教育・養成するだけではうまくいきません。ご近所には、天性の資質ともいえる面倒見の良さを備えた「世話焼きさん」がいます。世話焼きさんは、住民個々の近況を把握しているので、関係機関の適切なサポートがあれば、比較的容易に困りごとも解決できます。この世話焼きさんにマップづくりに参加してもらうと、日ごろから周囲の要援護者の困りごとにどう対応しているかなど詳しい情報が得られます。一方で、困りごとを抱えた方は、助けてと言える相手を一人は見つける、自分のことをあえてご近所で噂にしてもらうなど、助けられ上手になることも大切です。
支え合いマップづくりの最終目的は、ご近所の問題の解決策を考え出すことです。マップを基にして、地域の気になる人について、気になること、本人や家族の対策行動、住民の対策行動、解決のヒントになる人や行動、解決案として考えられることを書き出し、うまくいきそうな解決案は実際に取組んでみましょう。
広域な地域全体で取り組む福祉活動と比較すると、50世帯程度のご近所での福祉活動は、ニーズが見えやすく、問題がまだ小さいうちに対処できるなどのメリットがあります。また、ご近所の世話焼きさんがうまく活躍できるようサポートしてあげると困りごとが解決しやすく、緊急事態にも即応できます。
ご近所の支え合いは、小規模なうえ、日常生活の中で自然に行なわれているので、広い地域からは見えにくいものですが、ご近所ごとに支え合いマップをつくると、気になる人や課題が見えてきますので、ぜひ皆さんの地域でも取組んでみてください。
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