令和元年度町内会活動実践者研修会報告

シリーズ⑳ ~町内会の担い手育成と見守り活動~

 

 

 令和元年度町内会活動実践者研修会は、令和元年8月7日、札幌市において、道内各地から120名の参加を得て実施されました。本年度は、行政、企業、地域などの様々な組織や団体との連携を通して、見守り活動や町内会の担い手育成、高齢化社会における地域での関わり方について考えました。

実践報告① 町内会の担い手育成と見守り活動

 札幌市豊平区豊平第12分区町内会の酒井秀男会長から、役員の担い手不足解消の取組み、周辺施設との連携、見守り活動や広報活動について報告いただきました。
 豊平第12分区町内会では、担い手不足の取組みとして、毎月発行の「町内会新聞」を通して、手の空いている時間に町内会のお手伝いをしてくれる「ささえ隊(サポート隊)」を募集。役員まではできないけど町内会の役に立ちたいと応募して頂き、積極的に活動をサポートしてくれるようになりました。
 また、周辺施設の「豊平若者活動センター」は、町内会に加入して頂き、さらに役員になってもらうことで、若い人の意見を聞くことができ、イベントの設営や町内会新聞の記事の提供など、今では町内会・連合町内会の行事では支援団体として活躍。「北海きたえーる」には、町内会に会館がないことから、会議室を借りることや、施設の夏祭りに出店するなどの協力体制ができています。また「豊平公園緑のセンター」からは、豊平公園祭りにおいて、スノーキャンドル、雪像の作成や流しそうめんの竹を提供してもらうなど助けてもらっています。
 見守り活動では、以前はイベントなどを開く集合型でしたが、人が集まらないなどの問題があり、平成14年から訪問型に切り替えました。「お元気ですか?」のメモと推進員の連絡先を書いた手紙、ごみ袋の3点セットを配付するなど「ふれあい訪問」を実施しています。また、そのほか小学校の夏休みに合わせて、「火の用心」を連呼しながら、20年以上町内を回って歩く地域の見守りも行っています。
 広報活動では、町内会の活動を毎月「町内会新聞」を発行して伝えています。内容も懐メロや川柳・健康維持に関する記事(区の介護センター)を掲載し、関心をもってもらえるよう工夫しています。また、最近はホームページやフェイスブックなど、インターネットを活用して、若い世代に見てもらえるようにしています。
 最後に、町内会の周りの施設(団体)と上手に連携するためには、一方的な協力を求めるのではなく、その施設団体のイベントに参加し、少しずつ時間をかけて信頼関係を築きながら、お互いに協力して取組むことが大切とのアドバイスをいただきました。

実践報告② 地域福祉活動事例集を活用した地域コミュニティ支援について

 苫小牧市福祉部の牧野武博氏と大山憲一氏から、苫小牧市で取り組まれている地域の福祉活動を紹介した「地域活動事例集を活用した地域コミュニティ支援」について、報告をいただきました。
 最初に苫小牧市の概要について説明があり、平成31年3月31日現在で、人口は171,493人、高齢化率は28.55%と4人に1人は高齢者の方が住んでいます。
 苫小牧市を7つの生活圏域に分けた場合、西部と東部では高齢化率に大きな偏りがあるのが特徴で、地域の課題が、地域の状況や文化、特色に影響するので、異なってくることが明らかになりました。
 具体的な地域の課題として、高齢者のみ世帯の増加、ごみ出しに困っている世帯など多岐にわたるため、町内会・自治会で考え、取り組む時間がなかなか取れないことや、情報を共有する難しさを感じている地域もあることがわかりました。そこで、行政や社会福祉協議会と地域の連携が深まれば活動の役に立てると考え、地域福祉活動事例集を作成しました。
 活動事例集は①見守り活動、②喫茶・サロン、③担い手育成・福祉教育、④男性料理教室・会食活動、⑤生活支援、⑥広報啓発活動の6つの分野に分けて作成されています。事例集を作成して1年間で、「サロンを立ち上げたい」「町内会役員の情報共有に役立てたい」「地域の活動を紹介するために使用したい」との問い合わせがあり、地域に必要な情報だということがわかりました。
 事例集の完成を受けて、次の年は地域コミュニティ形成の後押しに力を入れた活動を進めました。事例集を見て相談にきた町内会のサロンの立ち上げ支援や、他の町内会の活動に興味をもち、話しをしたいということで、町内会同士の座談会も実現しました。さらに「ふくふく通信」を発行し、地域の皆さんの工夫した取組みや熱い思いを紹介しています。また、苫小牧市の福祉部と市民生活部で福祉のまちづくりを推進していくために、市の職員として何ができるか、意見交換の場を設け、情報を共有することができました。
 最後に、地域コミュニティ支援を通して実際に市の職員が地域に入り、地域でつかんだ声を生かしたことや事例集の作成が新たな活動につながったこと、行政や社会福祉協議会、地域が連携する大切さを確認できたことについての報告がありました。

講義・ミニトーク

テーマ「地域の担い手育成と地域連携ネットワーク

    ~安全で安心して暮らせる地域づくりとは~」
講 師 杉谷 憲昭 氏(健康生きがいづくりアドバイザー北海道協議会)

 

◆なぜ担い手がいないのだろう?

 

 地域住民は連合町内会が何をどのような活動しているか、多分わからないと思います。そして何かを頼んでも、実際にやる人がいない。結局は誰がやるのかとなります。また、関わってしまうと辞めることができない。一番大きい原因は負担が増えるということです。連合町会に関わって人を住んでいる人達が一緒にどう支えるかだと思います。
 時代が変わっています。時代の変化に連合町会として5年、10年過ぎてどうあるべきかを考えることが必要です。同じ世代だけではなく、若い世代、どういう世代が何を感じているのか?住んでいる人の生の声を聞き、把握していかないと自治会と住んでいる人達の間にギャップができてきます。そのため、町内会の運営を見直すことも大事なことと思っています。

 

◆町内会(自治会)の住民同士の支え合い

 

 単位町内会、自治会、大きな組織であっても、一番大事なのは住民同士の支え合いです。地域が家族のように付き合いをしていく、『地域家族の時代』です。そのための3つの条件があります。
 1つ目は「人間関係」一番大切なのは、挨拶。挨拶をし、話をして、顔見知りになっていく。見守りは監視ではなく、人間同士の温もりや地域での目配り、気配り、心配りが大事になります。
 2つ目は「居場所」地域の中でサロンを作る。また、自分自身で居場所を探す、今日行くところが絶対に必要です。これは行政にだけお願いするのではなく、ぜひ皆さんでサロンを作ってほしいと思います。
 3つ目は「存在感」定年退職した人が社会参加してほしい。企業で色々な経験を積んだのにもったいない。色々なことができます。民生委員さん、社会福祉協議会との関係も大事。そして老人クラブの力を借りる。そういう人たちの存在感を維持して、どこに誰がいて、何ができるかを知っておくといいです。

 

◆地域連携ネットワークの構築

 

 高齢者の見守りとして、今までの民生委員さんや町内会長だけでは限界があります。民間事業者と連携による、複合的・重層的な見守り・安否確認システムが必要とされてきます。何日間も新聞がたまっている異変、ヤクルトの配達での異変、コンビニでの買い物、何かおかしいなと感じたら連絡をもらう。個人情報の壁が問題になりますが、個人情報と命とどちらが大事か。とにかくネットワークを作ることです。最後は地域包括支援センター、専門職がいますので、社会福祉協議会、行政と連携し、できる範囲だけでもネットワークを作ってほしいと思っています。

 

close