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シリーズ㉑ ~コロナ禍における町内会の防災・減災~ |
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令和3年度町内会活動実践者研修会が初のオンライン開催として350名を超える視聴を得て開催されました。
本年度は、コロナ禍における町内会・自治会の防災・減災をテーマに、インターネットによるオンライン開催として実施。実践報告と講義は、新型コロナウイルス対策に十分留意しながら生中継で配信しました
講 義
テーマ「コロナ禍における避難所での過ごし方」
講 師 根本 昌宏氏(日本赤十字北海道看護大学教授・災害対策教育センター長) |
今まさにコロナの災害が進んでいます。このような中で私達は自然災害とも向き合わなければなりません。コロナの「禍」は言い換えると「災害」と同じです。自然災害では、北海道では夏よりも冬場のほうが間違いなく大変なことが起こります。これに私達はどう立ち向かうのか。様々なことを考えていかなければなりません。
まず、一番の大前提をお話します。皆様が自宅から逃げるとき、コロナがどんなに怖くとも、自分が危ない場所にいる場合には、必ず逃げてください。避難はためらってはなりません。特に津波。さらに土砂、大雨洪水は逃げるが勝ちです。ハザードマップで事前に確認していただくとともに、コロナだからという、その躊躇が数秒であっても、それによって命を落とすこともあり得ると思っています。まずはためらわずに逃げるということを、町内会の皆様にお伝えいただきたいと思います。
逃げる避難は、「立ち退き避難」といい、行政が準備した避難所避難などがあります。最近多くなってきているのが、青空避難といわれる車中泊避難です。車中泊避難はコロナの流行を受けて、アンケート調査でもコロナ前の約2倍に膨れ上がっています。この時に気をつけていただきたいのは、エコノミークラス症候群をはじめとする災害関連疾患です。多くの健康を蝕む要因が車中泊避難にはあります。エコノミークラス症候群はトイレに行かない、水を飲まない、運動をしない、あとは足を曲げたままでいることで足のふくらはぎの静脈に血栓ができる深部静脈血栓症になります。
2年前の台風19号、21号で長野県、福島県をはじめとする多くの地域でたくさんの命が失われました。この時の衝撃的なデータは水害により命を失った人達の3割が、車の中で命を失っていることです。大雨洪水警報が出ていて、今でいうレベル4、レベル5のような状態の時に車を動かしてしまった方が巻き込まれました。もう1つは、安全だと思って停めていた駐車場で被災した。この2つです。ハザードマップ上の避難所に行くルートが安全かどうかを自分で認識するのは難しく、このような車中死を起こしてしまう危険性があります。
避難生活は、トイレに始まりトイレに終わります。この対策をうまくやっておかないと、様々な災害関連疾患に巻き込まれます。特にコロナの災害の中では、共同トイレが感染源となり得ます。コロナに感染すると血栓症を起こしやすくなります。一番最初に出てくるのが消化器症状です。お通じが止まります。これは何故か。1つはストレス。もう1つが食事です。おにぎり、菓子パン、カップラーメン。これが三種の神器のように届けられます。加えて不眠、あとは鬱症状。冬場であれば低体温症、夏場であれば熱中症。冬は、車で一酸化炭素中毒も起こります。
自宅が断水した場合のトイレ対策を紹介します。ビニール袋2枚方式です。洋式便座の場合、下に水がたまっていますので、まず1枚目の袋を便座にかぶせ、その上にさらにもう1枚を便座の上にかぶせます。それで便座は他の人と共用ではなくなります。ビニール袋毎に取り替えますので接触感染を防ぐこともでき、普段のトイレをそのまま使うことができます。そのトイレゴミは、基本的には各自治体がおむつと同じように処理してくれます。札幌市の場合は、災害トイレゴミという枠組みになります。ご自宅に何枚用意したらいいか、計算してみてください。1人が1日5枚。最低1週間。4人家族であれば140枚くらいの計算になります。そして凝固剤140個。今だったら買えます。災害が起きるとあっという間になくなります。ホームセンターなどで購入して、絶対一度経験してみてください。やるかやらないかで全然違います。ぜひ訓練していただきたいと思います。
災害時の食を考える時、普段と同じものにいかに近づけるかがとても重要で、キーポイントは塩分を少なくすることです。前段の災害関連疾患の中に高血圧の疾患が入っています。循環器疾患は、災害関連死の1、2を争う要因になります。その要因の1つである塩分をいかに下げるかが大事です。そして寒い時には自分達で作った温かい汁物を提供したいと思います。
皆様にご紹介したいのは、胆振東部地震の9月6日の昼の12時。あの地震から、わずか8~9時間後に、大きな避難所の前に厚真町商工会さんの炊き出し設備が並びました。普段から実施していた活動だそうです。これは、今コロナでご苦労されている皆様の町内会活動そのものです。防災活動やりますと旗を振るよりも、夏祭りやりますと、祭りの回数を増やすほうが、効果的かなと思います。いかに普段楽しいことを地域の方とやるか、いろいろな世代を交え、子ども達も遊べて、若いお父さんお母さんも参加して楽しめるイベントを、このコロナの状況を踏まえながら徐々に再開していただきたい。それができれば、災害時の食をクリアできる可能性があるのではないかと厚真町から学びました。さらに、北見の上仁頃小学校防災クッキングです。ハイゼックスというビニール袋の中に、地元で採れた、野菜、ソーセージ、これに玉ねぎスープを入れるだけで、とても美味しいスープが出来上がります。防災という言葉を使わないほうがいいかもしれません。私も昨年まで、町内会活動をさせていただきましたので、活動をすすめる上での難しさは、身をもって感じています。皆様方の地域でできることを考えていただきたいと思います。
コロナの拡大以降、ブルーシートに毛布1枚の100年間続いた避難所の光景はありません。ダンボールベッドを設置する。これによって床からの接触感染を防ぎます。もう1つ、床から30センチ以上ダンボールベッドが上がりますので、自分の背中の温度が床の温度よりだいたい12~3度上がります。ダンボールは熱を保持する素材ですので、低体温対策、冬の対策としてはとても優れてます。逆に、夏使うと暑いです。これは私達の課題です。コロナ禍で、もし災害が起きた時に、皆様方の力で何かをしなければいけないとなった時、パーテーションの高さは必ず140センチ以上をキープしていただきたい。家族ごとの飛沫拡散を防止するためです。そして、避難所の入り口では必ず上履きに履き替えてください。
コロナによって新しく加えなければいけない東大の松尾先生とともにまとめたリストがあります。まず、避難所には上履きを持っていくという習慣をつけていただきたい。それ以外には自分のゴミを捨てるためのゴミ袋です。マスクとアルコール消毒液は絶対持っていってください。あとは体温計。持病の薬。これ手に入らなくなります。そして、お薬手帳。これは私ども薬剤師からの願いです。さらに、ワクチンの接種済証。今まだ、1回目と2回目の接種途中の方がたくさんいらっしゃいます。こういった方が被災すると、2回目に何のワクチンを打っていいかわからないことが起こり得ますので、今、災害用の持ち出しに必要な物ということで加えていただきたいと思います。
冬の被災を考えると、避けて通れない暖房器の事案があります。皆様方の自宅のストーブ、停電しても使えますか。もう1つ。水道管は凍らないですか。ポータブル式ストーブは、六畳一間くらいの空間で1個点けただけで、わずか1時間で、健康に影響を及ぼすような二酸化炭素が出てくる。問題はこの二酸化炭素が増えることで、ストーブが不完全燃焼を起こして一酸化炭素が出てきます。これが命を落とす原因になります。ポータブル式ストーブはあったほうがいいですが、必ず換気をしてください。停電を伴う災害の時には、一酸化炭素中毒により命を落とす例がたくさん報告されています。
今、コロナ対策によって行政は手一杯です。避難所の中で、何か問題が起こってしまうと、避難所の運営が立ち行かなくなってしまいます。自分達もしくは町内会でできることは何だろうと最大限考えていただきたい。専門的な知識を有する人材として、電気屋さん、水道屋さん、ガス屋さん、お弁当屋さん等。普段の生活で専門に行っている仕事を、そのまま避難所で生かしてほしい。調理師の免許を持っている方が、スタッフに入ったらもう鬼に金棒です。このような仕組みができあがることが、発災後の生活の質を高める大きな要因になり、特に地域が強ければ強いほどこれができると思います。
普段の生活の中のいろいろなことが災害には生きてきます。外でバーベキューをすることも防災だと思います。非常食ありきの防災ではなく、自宅の中で普段使いのものをそのまま使うことを実際に体験してください。胆振東部地震からちょうど3年が経過しました。震災の後に皆様いろんなことを感じたと思います。皆様方、今のうちに、自宅、避難行動、避難生活について考えていただきたいと思います。受け身型の防災は通用しなくなっています。避難しようって言われてから避難するのではなく、自分から率先して情報を得て動けるか。ここをぜひ考えていただきたいと思います。最後に、今まさにこのコロナの災害の中にはありますが、たまには町内会の皆様とマスク越しでも構いませんので、顔の見える関係を作っていただき、万が一の時には町内会の活動が生かされるようになることを心から願っています。
実践報告
テーマ「コロナ禍での町内会・自治会の防災活動 ~地域の防災意識を高める~」 |
◆原 みちるさん(札幌市西区琴似2条中央町内会総務部長) |
コロナ禍で活動が制限される中、予算を有効活用するため、防災風呂敷を製作して町内会210世帯へ配付されました。
◆横山 芳江さん(一般社団法人日本風呂敷文化協会代表理事・防災士) |
災害時には給水袋のほか三角巾や頭巾、抱っこひもとしても活用できる耐水性のある防災風呂敷の活用法を防災士の視点からお話いただきました。
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