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シリーズ㉓ 見守り・支え合いの仕組みづくり~ケアラー支援を考える |
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令和5年度町内会活動実践者研修会が8月22日札幌市において、道内各地から約90名の参加を得て開催されました。
本年度は、「見守り・支え合いの仕組みづくり~ケアラー支援を考える」をテーマに、実践報告と講義、情報交換会の内容で行われました。
実践報告
①町内会の取組み
テーマ「高齢者の見守り活動~地域の関係機関と情報共有」
宇佐美明雄さん(札幌市西区山の手第17町内会会長)
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町内会役員、民生委員・児童委員、高齢者サロン会長、福祉協力員、関係機関として西区社協や地域包括支援センター職員で構成される福祉推進委員会の取り組みが紹介されました。3か月に1回の委員会で情報共有。福祉委員会と高齢者サロンが一体となって町内の高齢者を支える見守り体制をお話いただきました。
②社会福祉協議会の取組み
テーマ「ケアラーを地域で支えるために~住民調査より」
本田 徹さん (栗山町社会福祉協議会事務局長) |
平成22年の日本ケアラー連盟による調査が栗山町におけるケアラー支援の始まりです。その後、2回の調査を実施。介護は家族がするもの、支援の必要性に気づかない、誰に相談して良いかわからないなどの実態が見えてきました。命のバトン配付、ケアラーサポーター養成研修など社協と町内会との連携した取り組みをお話いただきました。
講義概要
テーマ「見守り・支え合い活動からケアラー支援を考える」
~地域だからこそできる見守り・支え合い活動とは~
講 師:中村 健治 氏
(北海道社会福祉協議会地域共生社会推進部長・ケアラー支援推進センター長) |
ひとりの不幸もみのがさない住みよいまちづくり全道運動はスタートして33年。北海道町内会連合会、北海道社会福祉協議会、北海道共同募金会との三者提唱による、全国的にも特徴ある取り組みです。社会福祉協議会と町内会が一緒になり、住民により身近なところでの福祉活動の実践です。事業スタート当時は、孤独死が地域での大きな社会問題の一つでした。今は、新たな社会問題として、介護殺人、介護心中、介護自殺などがあります。自分たちがいつケアを必要とするか、あるいはケアする側になるかわからない中、地域で安心して住み続けられるよう、地域でケアラーを支える取り組みを地域課題として捉えていただければと思います。
「限界だった」たった1人の介護の果て、なぜ22歳の孫は祖母を手にかけたのか。介護疲れ「妻をあやめました」病身82歳への実刑判決。79歳妻を海に突き落とした疑い、介護殺人容疑で夫逮捕「介護に疲れた」という新聞や報道を見ます。こうした介護殺人は年間20件から30件、2週間に1件程度起きていると厚生労働省のデータで出ています。また、高齢者虐待も、年間1万7千件で毎年増えています。虐待の要因は、介護疲れや介護ストレスです。
介護保険制度などのサービスは充実してきているのになぜなのか。人を家に入れたくない。家の流儀がある。掃除は他人に頼りたくない。家には息子、娘、孫がいるから大丈夫。そういった方が結構います。そして、家族だから頑張ります。このようにサービスにつながることが難しい世帯もあります。
2014年東京で開催されたフォーラムでの元ヤングケアラーの声です。
父の介護が始まったのは高校1年。働いてきた母が帰宅するまでは、自分が介護に専念した。何らかの社会的支援に関する情報があること自体わからなかった。関係者は要介護の父には関心を持ってくれるが、介護をする側の自分には関心を持ってくれない。「誰も見てってくれないんだ」という憤りを感じていた。友人にも、父のオムツの取り換えのことなどは話せなかった。学校でも、自分は早く帰って介護をしなければならない。この介護はいつ終わるのか…、毎日をつなぐのに必死だった。だから就職という選択も描けなかった。介護をしてみて、「僕は僕の人生を生きていけますか?」ということを誰かに聞きたかった。若者介護は「頑張ったね、大変だったね」と美談化される気がする』皆さんどう感じましたか。
2040年は、第二次ベビーブームに生まれた団塊ジュニア世代が65歳以上の高齢者になる年です。少子化による急速な人口減少と高齢者人口がピークになると言われています。そのような中で、ケアについては、老老介護、8050問題、ヤングケアラーやケアラーの孤独・孤立、介護ストレス、介護疲れ、介護殺人、介護自殺、介護心中、介護離職等々の問題があげられます。特徴的なものとして、介護殺人・心中はひと月に3件起こっています。介護離職者は年間10万人。今、日本の「働き手が減少」という時に、介護を理由に年間10万人も仕事を辞めています。そして、ヤングケアラーと言われている子どもは、ケアのために進学や就職もできないかもしれないのです。国の調査では20人に1人、ひとクラスに1人から2人の子どもがヤングケアラーで家族のケアをしています。
少子・高齢化の人口減少により、2025年には65歳以上の高齢化率は30.3%と推計され、ケアを必要とする人が増えていきます。また、単独・夫婦のみ世帯の増加で「家族介護力」が弱くなり、そして、無縁社会といわれるように、近所とのつながりなどの「地域力」も弱くなっていきます。介護は、家族だけでは難しく、社会での支えが必要になってきています。
北海道は、社会で支える仕組みづくりとして令和4年に条例をつくりました。ケアラーになっても、ケアが必要になっても、自分も家族も安心して住み続けられる北海道をつくりたいというのが条例の目的です。ケアラー支援のための社会の仕組みづくりに、そこに住む皆さんが、各自治体と共にどんな町をつくっていくのかと、これまで向こう三軒両隣の安心できる地域づくりに取り組んできた町内会として自治体の話し合いの中に入っていただければと思います。
ケアラーとは、こころやからだに不調のある人の「介護」「看病」「療育」「世話」「気づかい」など、ケアの必要な家族や近親者・友人・知人などを無償でケアする人のことです。
ヤングケアラーとは、家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話・介護・感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子どもをいいます。なお、日本ケアラー連盟の実態調査によると、ケアラーは4~5世帯に1世帯という結果が出ています。
若い時からケアをしてきた方の話です。ケアを終えて20年後に就職しようと思った時、履歴書の職業欄に介護って書けない。企業は介護してましたと言っても、評価してくれない。これまでの私の介護は何だったんでしょうかという声を聴きました。介護をしている人は介護技術もあれば病気についての知識、コミュニケーション能力もあります。そういう能力の評価をされるべきではないでしょうか。
◆ケアラー・ヤングケアラーの求める支援と社会的な支援の必要性 |
北海道の調査での「ケアラーが求める支援」として、一つ目は、相談できる人や場所が欲しい。具体的には、制度に詳しい人、何でも相談できる人、そして、忙しいので自宅に来てくれるような出前的な相談員が欲しいと言っています。二つ目は、お世話をしている人の精神的な支えをして欲しい。具体的には、自分の話を聞いて欲しい。たまには疲れて愚痴も言いたい。ちゃんと聞いてくれる人が欲しいと言っています。また、たまに困っている時に「何か大変なの?」とか声をかけて欲しいとも言っています。このような二つ目の関りは、普段から交流のある人、身近な町内会、町内会の福祉部などが窓口になって支えていただければと思います。
北海道においては、北海道町内会連合会がひとりの不幸もみのがさない住みよいまちづくり全道運動により向こう三軒両隣、お互い様の関係づくりという身近な地域福祉の取り組みを推進しています。北海道社会福祉協議会として、今後も市町村社会福祉協議会、そして民生委員・児童委員さんと共に町内会と連携しながら「住んでいて良かった、うちの町」と思えるような取り組みを一緒に展開させていただければと思います。
講 評
久しぶりに町内会の皆さんの話を伺えました。3年間のコロナの影響で関係が疎遠になったり、いろいろな苦労があることがわかりました。いざ活動しようと思っても、個人情報保護の関係で動けなかったり、役員の高齢化が進んでいたり、そういう面で、今の時期に町内会を一度リセットしてみるのも一つの方法かと思います。皆さんからもお話がありましたが、町内会活動を進めるうえで顔の見える関係が大事です。ケアラーさんが愚痴を言える仲間が地域にいる。そんな横のつながりを築いていただければと思います。自分たちの地域ではどんな活動の進め方ができるのか、新たなコミュニティとしての町内会活動に取り組んでいただければありがたいと思います。
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