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シリーズ㉔ 役員の担い手不足と支え合いの仕組みづくりを考える |
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令和6年度町内会活動実践者研修会は、令和6年8月30日、札幌市において、道内各地から124名の参加を得て実施されました。本年度は、「役員の担い手不足」と「支え合いの仕組みづくり」をテーマに開催いたしました。
実践報告
テーマ「ボランティア活動と地域のつながり」
大河原哲郎さん(札幌市琴和町内会会長)
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倶知安町琴和町内会会長の大河原哲朗さんから、ボランティアを通した地域の絆づくりについて報告いただきました。
1978年に町内会館ができて活動が活発化した琴和町内会では、平成18年には、「ちょぼら(ちょっとしたボランティア)除雪隊」を結成し、安否確認を兼ねて高齢者宅の除雪の手伝いをしています。現在の隊員数は男性45人で地元の学生や町外のボランティアツアーなどの受け入れも行いテレビや地元の新聞に取り上げられました。
また、 「虹の会」という女性のみのボランティア部会も平成20年に結成し、老人ホームの花壇の手入れ、車椅子の清掃、ウエスづくりのほか入所者との交流を行っています。
ちょぼら除雪隊と虹の会のメンバーでペアを組んで高齢者宅を訪問し安否確認を行う「見守り隊」も平成29年に結成しました。
さらに町内会の老人クラブを中心に結成した「ひまわり会」ではサロンを開いています。毎月第2、第3火曜日の午前10時から午後2時まで町内会館で開かれ、毎回30名ほどの参加があり、カラオケ、麻雀や囲碁のほか、昼食を囲んだり、ふまねっとの講習なども取り入れています。
また、小学校や高校などの学生たちと昔遊びなどで交流もしています。
高齢者が多い町内会ですが、これらのボランティア活動を通して世代を超えた住民同士の絆が深まっており、町内会活動の充実につながっています。
テーマ「町内会に加入してもらうために」
岩谷隆司さん (札幌市東区札苗地区自治連絡協議会会長) |
札幌市東区札苗地区自治連絡協議会会長の岩谷隆司さんから、楽しい町内会づくりのためにと題した報告いただきました。
新住民を町内会に勧誘する際に、「なぜ町内会に入らなければいけないのか」という人もいるので、班長で対応が難しい場合は役員が行くようにしています。
町内会の活動内容や役員体制、行事内容などのほか、インフラ関係、近くの交番などの暮らしに役に立つ電話番号を掲載した 「会員の便利帳」 を作っており、訪問する際に持っていきます。訪問する側もこの便利帳があると訪ねやすくなり、新しい住民の方にも町内会への理解が深まりやすく、取り組み開始から約20年で私の町内会では加入率は約98%になりました。
さらに町内会清掃など、行事を通して地元の老人クラブや子どもたちとの交流にも力を入れています。
講義概要
テーマ「役員の担い手づくりと地域の支え合いの仕組みを考える」
~町内会活性化道内・全国先進地域調査を基に~
講 師:大野 剛志 氏
(旭川市立大学保健福祉学部コミュニティ福祉学科教授) |
北海道内では都市部への人口集中が進んでおり、札幌、旭川、函館の3市で全体の48・9%を占めている一方、地方では高齢化が進んでおり、これからは都市部でも高齢化の影響が大きくなっていくと考えられています。
町内会においても、組織率減少と役員の高齢化が同時進行していることに加え、コロナ禍を経て、 オンラインの会議等、 デジタル化が進み、便利な部分もありますが、地域の絆、対面的なやりとりが、必要ないのではないかというネガティブなイメージがついたように感じます。
地域ごとに設けられている町内会・自治会という団体は、暮らしやすい地域社会づくり、自分たちの生活を拡充するための組織であり、自主的に何とかしようという共同をつくっていくための土台です。ですが、組織率の低下や高齢化も進み、担い手が出てこない。だから停滞していく。自分たちの足元の地域が衰退していくということが本当にいいのかということを皆で共有しなければならないと思います。
そこで役員の担い手確保や活性化について、道内と全国の先進地の事例で工夫を探りました。
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❶厚真町豊丘自治会
胆振東部地震の際に、元高校教員が経験を 生かして手書きの新聞を作り、給水車の情報や住宅被害状況などを伝えた。退職者は現役時代に培った技能があるため、生かせるような環境を作ることが大切。
❷室蘭市知利別テラスタウン自治会
2023年4月に組織された新興住宅街の 町内会でLINEアプリを活用した町内会情報の共有化で若い世代の会員獲得に成功し加入率100%達成 回覧板をなくし、LINEで情報共有 活動の負担感が軽減したことで町内会に対 する負のイメージが払拭され、本当に必要なことは皆で助け合おうという意識が高まっている。
❸岩手県盛岡市三本柳南町内会
やれる範囲で無理せずやる。新たに事業を 1つ始める場合には既存の事業2つを止めて負担を軽減している。
❹福島県郡山市日吉ヶ丘町会
会員との信頼関係をもとに、加入全世帯の 家族構成や75歳以上の高齢者の人数など情報を得て共同管理している。 東日本大震災の際の安否確認で活用できた。
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住民が求めることと町内会ができることを合致させることが必要で、住民と役員双方の負担軽減を進めることや、活動を進めながらリーダーを養成することも重要です。 「活性化」ばかり意識するのではなく、住民や参加者の満足度に重点を置くことが今後町内会を維持継続していくために重要になってきます。
また、地域の学生(小中高校生や大学生)と共同で行事を行うと、将来、地域コミュニティの構成員となる学生達が町内会の存在意義を理解することができます。町内会の維持継続のためには活動を通じて担い手を育てる「次世代育成と継承の視点」が鍵となります。

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