平成15年度全道町内会活動研究大会は平成15年6月16日、札幌市かでる2.7において、道内各地より約260名の参集を得て開催されました。
 大会に先立ち、北海道町内会連合会長表彰、並びに町内会・自治会広報コンクール(平成14年8〜9月実施)表彰式が行われ、町内会活動の功績に対する会長表彰では31組織、59名、広報コンクールでは14組織の方々が表彰を受けられました。
 研究大会は、基調説明、講演の内容で行われ、講演は、森 啓氏(北海学園大学法学部教授)を講師に招き、「市町村合併と地域づくり」をテーマにお話いただきました。
 以下、概要をご紹介します。


講演 「市町村合併と地域づくり」
講師 森 啓氏 (北海学園大学法学部教授)

 今、日本列島は市町村合併で大揺れです。過去には「明治の大合併」、戦後の「昭和の大合併」を経て、現在、3度目で「平成の大合併」とも言われています。
●地方分権が事の始まり
 事の始まりは、地方分権で、これまでのような、地域の実情を顧みない中央集権、いわゆる全国画一の行政システムでは問題があるということで、地方に権限とお金をつけて、自分達の住んでいる地域の事はゴミの問題でも福祉の問題でも、そこに住んでいる方々がお互いに力をあわせて、自分達の才覚で行動していい町にしていこうという地方分権に変わって行きました。
●市町村合併騒動
 さあこれから地域づくりを真剣に考えなければという時に合併問題は突然降って湧いたように出てきました。
 ところが北海道は、広いため、全国に比べて合併の動きが鈍く、合併特例法では、平成17年3月までに人口一万人以下の町村は、合併しなければ、自治権を法律で取り上げると言い出したのです。それで合併騒動になっているのです。
●膨大な赤字財政が原因
 中央では、合併したほうが地方のためになるといいますが、地方のためではなく、700兆円の借財節減という中央の都合なのです。1番目に多い公共土木事業費は、抵抗族等の癒着で削れない。2番目に大きい社会保障費は反対の力が弱く、現実に減っています。3番目が地方交付税の削減です。全国3200の市町村を1000にすれば、地方交付税は少なくなります。地方交付税は、高所得者の多い地域、低所得者の多い地域など、市町村間の税源の不均衡による格差を、国が調整する交付金です。税金と名前を変えてわかりにくくなっていますが、地方に返すお金なのです。
 北海道の町村は178あり、人口一万人以下の町村は80%の142町村です。合併しなければ自治権を取り上げると言うのです。憲法第8章違反です。国を相手に訴訟を起せば勝ちます。北海道の町村長さん何も慌てる事はないんです。
●北海道庁は何を応援するのか
 その時、北海道庁は何をするのかという事です。昨年8月の自治体学会で開催地の福島県知事が、「県内には合併しない宣言が新聞で取り上げられ有名な町がありますが、福島県としては、合併を決めた市町村も合併しない市町村も同じように応援をしたい、それが県内の自治を守る、県庁の仕事であると考えている。」と挨拶されていました。北海道においても管内、市町村ごとに状況は違います。それぞれの市町村が強制されて合併するのではなく、独自に地域の将来を考えて行けるよう、応援していただけるといいのです。北海道庁が、道内142町村の自治権の取り上げがあっていいものか、憲法違反行為ではないかと訴訟を起こすと、新聞は報道します。それが発信力ではないでしょうか。
●日本列島の2つの分かれ目
 市町村合併は、日本の人口が減少、偏在し、高齢化率が上昇している、そういう時期に、日本列島を一色の町村にしようとする案です。明らかに間違いです。
 自分達の地域は自分達で守る方向へ向かうのか、従来同様に中央が全国を統治・支配する方向へ向かうかが現在の日本列島の分かれ目です。
●地域が自律した体制づくりを
 日本経済の景気が回復し、地域を盛り上げていくには、地域が自律した体制を作ることこそ、今重要な問題なんです。
 私は、町村がずっと現在のままでいいというのではなく、交通機関が発達したり、生活行動圏が違ってきたりと、必要があれば自分達で決めて変えるべきだと思うのです。北海道においても、自分達の町を大切にしていくという事が、地域を良くする事でありますから、北海道の町内会長さんがここで力をあわせれば、北海道は正しい方向に、流れを取り戻す事になるのではないでしょうか。