平成17年度全道町内会活動研究大会は、去る6月2日、札幌市かでる2.7において、道内各地より約280名の参加を得て、開催されました。
  大会に先立ち、北海道町内会連合会長表彰式が行われ、30組織、94名の方々が、町内会活動の功績に対する表彰を受けられました。
  大会は、基調説明、講演の内容で行われ、講演は、布村明彦氏(国土交通省河川局河川計画課長)を講師に招き、「災害に強い地域づくりをめざして、今、私たちにできること」をテーマにお話いただきました。以下、概要をご紹介します。


講演 「災害に強い地域づくりをめざして、今、私たちにできること」
講師 布村 明彦 氏(国土交通省河川局河川計画課長)
●過去最多の台風が日本へ襲来

  昨年は日本への台風襲来が非常に多く、過去最大の10個の台風(例年の4倍)が上陸し、各地で水害や土砂災害が発生しました。そして、記録的な高潮、高波、地下街浸水など、今までに経験のない多くの現象が起きました。北海道においては9月の台風18号による被害があり、一番被害が大きかったのが10月の台風23号で、兵庫県の一級河川円山川が破堤した際、避難した人の数は1割に満たないという状況でした。

●日本に洪水が多い理由
 日本は急勾配な河川が多く、源流から海までの距離が短く、水は一気に流れます。また、河川の流域面積が狭いために、あっという間に増水するという特徴があります。さらに、日本の年間降水量は世界平均の約2倍、しかも、梅雨期と台風期に集中しています。ここ数年、集中豪雨が頻発しており、長期的に見ると、気候の変動と同様に降水量の変動も年々大きくなり、洪水も渇水も起きやすくなる可能性が高いといわれています。
●土砂災害は日本の宿命
 集中豪雨による災害の形態は三つ。一つ目の「がけ崩れ」は雨や地震などの影響によって、土の抵抗力が弱まり、急激に斜面が崩れ落ちる現象。二つ目の「土砂流」は山腹や渓床を構成する土砂石礫の一部が長雨や集中豪雨などによって水と一体となり、一気に下流へ押し流される現象。一瞬のうちに人家や畑を壊滅させます。三つ目の「地すべり」は斜面の土塊が地下水などの影響で地すべり面に沿ってゆっくりと斜面下方へ移動する現象。広範囲に及び甚大な被害を及ぼします。これらの被害を及ぼす「土砂災害危険箇所」は日本全国21万ヶ所にあります。そして、昨年の水害及び土砂災害による死者・行方不明者の6割が高齢者という状況でした。
●地震による教訓
  昨年10月の新潟県中越地震による犠牲者の多くは、「建物の倒壊」や「土砂崩れ」が原因でした。前段の台風23号により地盤が緩んでいたことも災いして被害が拡大しました。平成7年の阪神・淡路大震災による犠牲者の多くは、「建物の倒壊」が原因でした。大震災後の教訓は、@住宅の耐震補強工事や家具の固定などによる備えが命を救う。A多くの人が近隣住民によって救出されたことです。地震から最初の24時間、最大3日目までに救出された方々の命が救われました。

   
新潟県中越地震による建物倒壊と土砂崩れ
   
●防災は自助・共助・公助みんなの取り組み

  防災は、自助・共助・公助みんなが取り組んで、被害が少なくなります。自助は、個人の助かろうとする力。共助は、隣近所の助け合い。公助は、役所(自衛隊、警察、消防署なども含む)による堤防や避難所の整備、防災情報の発令・伝達、救助・避難・復旧・復興です。
 昨年12月のスマトラ島西方沖地震大津波で、被害を大きくした原因は、ハード面で防御施設が不十分であったこと、ソフト面では情報伝達体制や知識の普及・啓発がなされず、津波の発生を住民が十分認識できなかったことがあげられます。

●自助・共助が被害を少なくする
  地震が起きたら、まず身を守り、あわてて外に飛び出さない。家族の安全を確認したら、隣近所の人の安全も確認して助け合う。学校や決められた場所に避難するとき、電気のブレーカーを切る等があげられます。災害はどんなふうに起きるか、自分の住んでいる所はどんな災害がありそうか、洪水や地震が起きたときどうすべきか、してはいけないかを知っておくことが大事です。洪水ハザードマップの確認、自主防災組織づくりや防災マップづくりなどの自助・共助が、被害を少なくします。 (文責・事務局)