平成17年度町内会活動実践者研修会は、平成17年8月2日、札幌市において、道内各地から約140名の参加を得て実施されました。本研修会は、午前の部で、今年4月から完全施行された個人情報保護法への町内会としての対応、午後の部で、情報を共有しながら悪質な手口による高齢者の被害を防止するためのネットワークづくりを学びました。
 以下、講義と演習の概要をご紹介します。


午前の部 講義1
  テーマ「町内会として知っておきたい個人情報保護法のポイント」
講師 石川 和弘 氏(札幌総合法律事務所弁護士)

 
○「民法による慰謝料」と「個人情報保護法」の関係
 認知症、生活保護世帯など「世間一般に知られたくない情報」が漏洩して、精神的な苦痛を被った場合、民法による慰謝料の問題が発生します。個人情報保護法は、そうした個人の情報が漏洩しないための法律です。もし、住所・氏名・年齢などを記載した町内会名簿が漏洩して、会員から慰謝料を請求された場合、誰が責任を負うのでしょう。町内会として、盗難・紛失などで情報が漏れないように対策を講じる必要があります。肝心なのは余計な情報はもらわない、不必要な情報は廃棄することです。
○会員5千未満であっても最小限の管理体制を
 個人情報保護法は会員5千人以上の町内会に適用されます。ただし、5千未満の町内会であっても、情報漏洩があった場合、保管の仕方など管理体制がずさんであれば、慰謝料請求や社会的非難を浴びる結果になりかねません。5千未満であっても、最小限の管理体制が必要と考えます。
○問題となる4つの局面
 @取得(第17・18条)
 まず、本籍地の情報は、部落差別の関係でもらわないに限ります。情報取得の際には、利用目的を本人に通知・公表して下さい。すでに取得していれば、速やかに利用目的を本人に通知する必要があります。通常はホームページですが、町内会では回覧板を利用して「当町内会ではみなさんから取得した個人情報を○○○のために使用します。」のように通知するといいと思います。これから会員になる人にも同様です。
 A利用
 情報の利用は、取得時に目的を通知・公表していれば問題ありませんが、事業が増えるなど目的の変更があれば、回覧板等で通知する必要があります。
 B管理
 情報は貴重品の意識で、盗難・紛失に気をつけて管理します。
 C提供(表1・2参照)(第23条)
 C(情報の提供先)の利用目的がどこにあるのかで「第三者提供」と「委託」とに振り分けられます。町内会では「第三者提供」が圧倒的で、本人の同意が必要です。但し、例外があります。 皆さんにとっての例外@国、自治体その委託先からの要請があった場合。例外A人の生命、身体又は財産の保護のために必要で、本人が同意できない場合。例外B本人のためになり、従来から行っていることで反対するはずがない場合。「黙示の同意」といい、町内会にとって大きな支えになります。(例:犯罪捜査協力、悪質商法被害防止、119番通報等)
 

○参加者からの質問
質問@ 連合会の役員名簿(住所・氏名・電話番号記載)を毎年作成して、町内会、区役所、小中学校等の関連団体に配付しているが、問題はないか。
答 え 情報の流れは、A(町内会役員)B(連合会)C(関連団体)となる。配付は黙示の同意をもらっていると考えてよいが、就任時に利用目的(活動のために配付すること)を伝えておく必要がある。
質問A 回覧板による保健検診等の申込みで、氏名、年齢、住所等の記載は法に抵触しないか。
答 え 本人が他人に見られるのを承知で記載していると思われるので、法に抵触はしない。他人の目に触れない工夫として、申込書を封筒に入れるのも一案。
質問B 町内会未加入世帯の住所・氏名・家族構成の情報を管理人から提供してもらって問題はないか。
答 え 情報の流れは、A(未加入世帯)B(管理人)C(町内会)となる。町内会が管理人からAの情報をもらう際に、Aの同意をもらっているか確認が必要。
質問C 総会資料へ会員名簿(氏名、住所、電話番号)を掲載して問題はないか。
答 え 会員の氏名、住所、電話番号までなら、黙示の同意と考えてよい。但し、一般電話の横に携帯電話を載せるなど、余計な情報は載せない。会員台帳を記入してもらう際に、利用目的を通知・公表する必要がある。
質問D 地域でひとり暮らしの高齢者の見守り活動に取り組んでいる。現在は健康で周囲との交際を拒む方への対応はどうすべきか。
答 え 情報をもらえないことに本法律では何も述べていない。情報をもらうためのアイデアを出して、法に触れないかを確認する枠組みで考えて下さい。
 
お問合わせ先
 
札幌総合法律事務所(011-281-8448)
 

午後の部 講義2
  テーマ「高齢者に多い消費者被害の現状と被害防止ネットワークづくり」
講師 塩越 康晴 氏 (北海道立消費生活センター相談部長)

 
○相談件数が過去最高
 悪質商法による消費者被害は、年々悪質、巧妙になり、最近は、点検商法による高齢者などの弱い立場の方を狙った被害が多発し、社会問題化しています。本センターへの相談も急増しており、昨年は約2万2千件(前年度比140.7%)と過去最高になりました。
 高齢者の被害で特に多いのは、「布団」、「床下工事」、「健康食品」です。高齢になるほど話し相手になってしまうと情で断れなくなる傾向があり、被害に遭ってもなかなか相談できず、一人で悩んでいることが多いのです。
○高齢者が狙われる手口
 たくさんある手口の中で、特に高齢者に気をつけてほしいのは「点検商法」、「次々販売」、「SF商法」です。 「点検商法」は、今問題となっている床下工事などの手口で、排水管や床下の点検で入り込み、不必要の高額な床下工事などを契約させます。
 そして「次々販売」は、布団や工事を一度契約すると、それだけで済まず、布団リフォーム、浄水器などと次々に購入させたり、工事の場合は点検を繰り返し、あれもこれもと次々に契約させる手口です。
 また、「SF商法(催眠商品)」は、「無料で商品さしあげます」という言葉で誘い、無料の商品を配布して会場の雰囲気を盛り上げた後、高額な商品を買わされる手口です。「旅行の無料招待」も、貴金属や和服などの展示会の場合があるので要注意です。
   
   
○8日以内は「クーリング・オフ」で無条件解約
 契約しても、すぐに支払いをしない。預金通帳は絶対見せてはいけません。契約してしまったが、必要ないと思った場合、「8日以内」であれば、「クーリング・オフ制度」といって無条件解約ができます(工事終了後も可)。その時のハガキは必ずコピーし、「配達記録郵便」で送ります。
○被害を防ぐネットワークづくりを
 被害を予防するために、おかしい業者がいたら役場へ連絡して下さい。回覧板での注意呼びかけも効果的です。そして、ヘルパー、老人クラブ、民生委員、町内会などが連携して、地域ぐるみで注意しあうことが一番だと思います。
 道内では、地域の関係機関が連携した16の消費者被害防止ネットワークが設立されています。今後は、この地域ネットワークを全道に広め、各地の情報を得て、台風情報のように警報を出して呼びかけたいと考えています。今はみんなで守らなければ守れない時代です。ぜひ、地域で声をかけてネットワークを作ってほしいと思います。


お問合わせ先
 
北海道立消費生活センター (011-271-0999)

 午後の部 演習
  <住みよいまちづくり通信 51より抜粋>