平成19年度全道町内会活動研究大会は、去る5月21日、札幌市かでる2.7において、 道内各地より約250名の参加を得て開催されました。
 大会に先立ち、北海道町内会連合会表彰、並びに町内会・自治会広報コンクール表彰式が行われ、 町内会活動の功績に対する表彰では40組織、70名、広報コンクール(平成18年9〜10月実施)では14組織の 方々が表彰を受けられ、受賞者を代表して、手稲区の丹伊田和義さんが謝辞を述べられました。
 さらに、大会決議が提案され満場の拍手で賛同をいただきました。
 大会は、基調説明、講演の内容で行われ、講演は室崎益輝氏(総務省消防庁消防研究センター所長)を講師に招き、 「地域の安全・安心と市民防災活動」をテーマにお話いただきました。
 以下、講演の概要と大会決議をご紹介します。



講演 「地域の安全・安心と市民の防災活動」
講師 室崎 益輝 氏 総務省消防庁消防研究センター所長
●21世紀は地域・安全安心・協働共創の3つの時代
  ▲コミュニティの大切さを強調された
 講師の室崎益輝さん

  はじめに、防災という面からみた21世紀はどのような時代かを考えます。1つ目に地域が見直される「地域の時代」、 2つ目に心の豊かさを求める「安全・安心の時代」、3つ目にそれぞれの良さを持ち合わせて一つの大きな仕事を達成し、 お互いの繋がりを大切にしていく「協働・共創の時代」、21世紀はこの3つが基本になっていく時代だと思います。  

●地域の繋がりが多くの命を救った
 阪神・淡路大震災では5,500名が亡くなりましたが、その一方で3万5千〜4万名の方が崩壊した家屋から救出されました。 重要なのは、消防や自衛隊に救出された方々はほんの一握りで、8〜9割の人たちは家族、近隣住民、 消防団員という地域に密着した人たちによって救出されたことです。また、多くの火災が発生する中、 日頃からコミュニティ活動がしっかりしている地域では、バケツリレーによる消火活動で実際に火を消し止め、 多くの命を救いました。しかし、コミュニティが弱い地域では住民の監視力が弱いことから違法駐車や違法建築などが多く、 そのため消防車が通れずに火災などの被害が広がりました。まさに、日頃から地域の繋がりがしっかりしているところでは様々な 助け合いが展開され、多くの命が救われたのです。
●社会全体で安全・安心が問われる
 これからの21世紀は大変な時代を迎えます。まず、地震の動きでは、今後100年の間にプレート型地震の周期が必ず来ると言われ、 何も対策を講じなければ、日本全体で地震による死者は約7〜8万人と予想されます。また、危険は地震だけではなく、 放火や自殺などによる死亡、さらに、エレベーターや湯沸器などの保守管理上の死亡事故など、社会全体が疲弊しています。 地震などの防災対策だけではなく社会全体に対する安全・安心が問われています。そのような時代に私たちが出来ることは、 地域社会のコミュニティをしっかり創り直すことだと思います。
●自然災害には防災よりも、みんなで力を合わせる減災
  阪神・淡路大震災で学んだことに、「減災」という考え方があります。地震・津波・火山の噴火など人間の力では防ぎようのない災害に対して、 一人でも犠牲者を減らそうと努力する考え方です。今は市民が主人公になり、みんなが力を合わせないと大きな自然に立ち向かえない 「協働・共創の時代」が来ています。大きな災害発生時、行政の迅速な対応には限界があるため、いざという時には自分で自分の身を守り、 地域の助け合いの仕組みとして自主防災活動が重要になってきます。
●心・知恵・繋がりの3つの備え
  災害に対する備えとして、3つの備えがあります。ひとつは、心の備えとして、地域教育で震災や戦災の話を例に取り上げ、 命の大切さを伝承することが重要です。2つ目に、知恵の備えとして、災害図上訓練DIGでまちを知り、 災害時を想定しながら対策を考えることも一つの手法です。3つ目に、繋がりの備えとして、 地域の安全の主人公である子供を中心とした取り組みを大人が支えていくような世代を超えた繋がりがあります。この3つの備えに、 行政、市民のほか町内会等の地域に密着する組織やNPO法人などの連携が大切です。  
●住民の繋がりに安全・安心がついてくる
 安全・安心を考える時、防災だけを念頭におかず、地域ぐるみの花壇や路地裏の整備などの「良い環境」があって、 住民の繋がりがあれば、安全・安心がついてきて「良いまち」がつくられるのです。 日頃から地域でコミュニティがしっかり機能しているかどうかを見つめ直すなど、非常時を考えて日常を正すということが重要です。 私はコミュニティが地域防災の核心であると思っています。  
(文責・事務局)


大会決議
「安全・安心なまちづくりをすすめるための大会決議が賛同されました」
  本大会開催にあたり、大会決議が提案され、満場の拍手で賛同いただきました。大会終了後、 下記大会決議は大会参加者の総意として、関係省庁並びに自治体に対して呼びかけました。
    ▲大会決議を読み上げる
 長谷川敬二ブロック総括理事
     
大会決議文
 平成19年度全道町内会活動研究大会に参加した私たち一同は、住みよいまちづくりをめざして、 子どもからお年寄りまで誰もが住みやすい安全・安心なまちづくりをすすめるために集いました。
 今日、私たちの地域では、度重なる地震、台風、竜巻などの自然災害に伴う被害、 急速に進む高齢社会のなかでの介護問題や高齢者を狙った悪質リフォームなどの被害、 いじめや児童に対する犯罪など子どもの安全に係る諸問題、更には地球規模での環境破壊、資源問題など、 実に多様な課題が日々の生活の中に顕在化しております。
 本日ここに、住みよいまちづくりをめざして集結した私たち町内会・自治会は、 住民一人ひとりが抱える生活問題を的確に把握し、地域の課題として解決を図るため、 社会福祉協議会をはじめ関係機関・団体と連携を図りつつ、住民同士が助け合い、 支え合う相互支援体制を築きあげていくため、次の事項について積極的に推進することを決議し、 関係省庁並びに自治体に対し、より適切な配慮を強く要望します。


 1. 災害に強い地域づくりのために、住民による自主防災活動をすすめ、 高齢者や障害者などの災害弱者と呼ばれる方々の日頃の見守り、災害時の体制づくりなど安全 ・安心な地域づくりを推進します。
 2. ひとり暮らしの高齢者等が消費者被害に遭わないための近隣住民によるネットワークづくりを推進します。
 3. 子どもたちを事件や犯罪から守るための防犯パトロールなどを呼び掛け、犯罪のない安全で安心な地域づくりを推進します。
 4. 環境への負荷が出来る限り低減される社会に向けて、ゴミの減量化と資源リサイクル全道運動を推進します。
 5. 医療、並びに介護保険制度の改正による値上げなどは、 過疎・高齢化に悩む地域で暮らす高齢者の生活に深刻な影響をあたえていることから、 高齢者の生活に過重な負担をかけない施策の配慮を要望します。

平成19年5月21日
平成19年度全道町内会活動研究大会参加者一同