平成19年度町内会活動実践者研修会は、去る8月3日、札幌市において、 道内各地から約140名の参加を得て実施されました。本研修会は、様々な町内会の活動場面での実践者研修会として実施し、 本年度は、災害時に住民が互いに助け合えるまちづくりをすすめるため、災害図上訓練DIGを学びました。

実践報告
 町内会における防災活動の取り組み 
〜災害図上訓練DIGの実践と防災サポート隊の結成〜
報告 田畑 隆二さん(白石区北郷親栄第一町内会長)

 白石区北郷親栄第一町内会(625世帯)では、平成17年の連合町内会主催のDIG研修会を契機に、 災害時の高齢者等への支援に取り組みはじめました。まず、役員、民生委員、一般住民を対象に、ミニDIGを3回開催。 1回目は地図を囲み、2回目は町内を歩き、3回目は危険箇所等について話し合い、地図に公園、病院、避難経路、消火栓、 危険箇所等を書き込み、防災マップに仕上げました。マップは会員と未加入世帯の希望者にも配付して大変喜ばれました。 さらに、民生委員の協力を得て、ひとり暮らしの高齢者世帯を1軒1軒訪問し、災害時のためのサポートについて説明。 結果、20名のうち、18名からの同意と承諾を得ました。18名の個人情報は、まちづくりセンターの金庫で厳重に管理し、 承諾書は1年毎の更新としました。その後、平成18年4月にサポート隊を結成し、応急手当、 救急救命講習の受講者16名の隊員により活動をスタート。現在、児童下校時の防犯パトロールを毎週月・水・金の3回実施するほか、 民生委員等と連携して災害時の伝達方法をはじめ高齢者18名の支援体制づくりをすすめています。  

  ▲報告者の田畑会長(右)と北白石まちづくり
 センター小島所長(左)
▲パワーポイントによる報告資料より


講義
   災害に強いまちづくりと災害図上訓練(DIG)
講師 北海道教育大学生涯学習教育研究センター
准教授 今  尚之 氏

 ▲講演・演習の指導をいただいた今先生
大災害から見えた地域の助け合いの大切さ
 阪神・淡路大震災をはじめ、先月の新潟県中越沖地震や3月の能登半島地震での救出の事例から、 大災害では隣近所での助け合いがいかに大切かがわかります。
 神戸市の真野地区は、阪神・淡路大震災で初期消火により延焼を免れて焼失は40棟で済んだそうです。 その後、復興に向けて、町内会長が毎晩集まって協議を重ね、町内会で被災状況の調査、炊き出し、 救援物資の配分、瓦礫の撤去などを行い、消防署や警察への要望も町内会がとりまとめました。 これは30年以上におよぶまちづくりの実績であり、日頃から高齢者がいきいきと住めるまちづくりについて 議論してきた地域だからこそ出来たことだと思います。
避難時に中間的な役割を果たすのは町内会
 一方、能登半島地震後のある避難所で、住民からの要望は市職員に寄せられ、 ある人は壊れた屋根や壁の保護のためのブルーシートを要望しましたが、手が回らないと断わられました。 市職員は一人ひとりの要望を聞くだけで精一杯でした。真野地区のように町内会がまとめた要望であればどう変わったでしょう。 避難所の生活水準や復興に向けた動きは、中間の役割を果たす町内会が機能したかどうかで違います。 「防災に関する世論調査結果(内閣府・H14年度)」から、災害時に地域活動の一翼を担うものとして、国民の多くが 「町内会・自治会」をあげています。しかし、隣の住人の顔も分からないで町内会が有効に機能するでしょうか。 災害時のためにも顔が見える関係が大事だと思います。
誰でも参加できる「災害イマジネーションゲーム」
 災害に強いまちをつくるには、わがまち意識を育てることが必要です。備えるだけでなく、 日頃からまちに対するまなざしや要援護者に関心を持つことが大事です。その意識を育てる一つの手段として、今日は、 気楽に誰でも参加できる「災害図上訓練DIG」を紹介します。「図上訓練」というと硬く感じますので、 私たちは災害イマジネーションゲームと呼んでいます。災害時の状況を想像して情報交換し、まちの地図を使い、 子どもやお年寄りも交えて、それぞれが持つ情報を出し合い、住民のこと、まちのことを考えていきます。
100回の講義より1回のDIG
 災害イマジネーションゲームには様々な方法があり、大きく@準備Aイマジネーション(想像)B地図に書くC結果をまとめる、 この4つに分けられます。まず、町内会でどういう目的のDIGにするかを考えます。そして、被害想定に基づいた行動を考え、 グループ協議、発表をして助言をもらい、次に、地図上に被害状況や要援護者、避難所などを書き込み、災害に弱い場所はどこか、 避難の際に渡る橋は大丈夫かなどを話し合い、安全な避難経路を考えていきます。そうすることで互いに助け合おうとする意識が生まれ、 関係づくりも出来ます。私は「100講義より1DIG」と思っています。
DIGから生まれたWAP
 函館市のある町会では高齢者が高齢者を見守る状況にあるため、地図を囲むDIGではなく、 DIGからWAP(ウォーキング・パトロール)を生み出して取り組んでいます。住民が毎日、道筋を決めて散歩し、 まちの変化や災害に弱い所などについて、定期的に話し合って解決し、地域のつながりを強めています。 災害イマジネーションゲームは一つの形ですので、この事例のようにまちに合った方法を考え、取り組んで下さい。
みんなが参加して・体験し・分かち合える場を
 まちづくりは幸せだけでなく、責任も苦しみも分かち合うことだと思います。災害に強いまちを育てるには、 日頃からのつながり、信頼、まちのルールを生み出していくことが大切です。7月の中越沖地震の避難所では、 中学生ボランティアが子守りや片付け、川へのトイレ用水汲みなど、一生懸命頑張っていました。みなさんの地域でも、 是非、中学生に活躍の場を作って下さい。そして、子どもから高齢者までみんなが参加して、体験し、 分かち合える場を地域でたくさん持ってほしいと思います。


グループ演習
「災害図上訓練DIGの実践」
 前段の講義を踏まえ、14グループに分かれて、自己紹介、イマジネーションゲーム、 マップゲームを通じて、災害図上訓練の実践方法を学びました。
●自己紹介
 避難所で何が出来るか、自己紹介をしました。
●イマジネーションゲーム
 下記3項目について各自が付箋紙に各3つ書き、発表し、模造紙に貼りました。
 @ 地震直後、あなたは何をしますか。
 A 避難所に避難します。何をしてから行きますか。
 B 避難所に避難します。何を持って行きますか。
▲地図を囲むグループ演習の様子
●マップゲーム
 ビニールをかぶせた大きな地図に、下記のまちの情報を書き込み、出来上がった地図をもとに、 災害時の避難経路、救助方法を考えました。
 @ 地図上に自分の家を決める。
 A 避難所・避難場所、病院、コンビニ・スーパーを確認し、色別のマジックで囲む。
 B 要援護者世帯には青丸シール、危険箇所には赤丸シールを貼る。

まとめ
 皆さんの地域に合った形で災害イマジネーションゲームを是非、実践してほしいと思います。 目的は地図を作ることではなく、人と人のつながりを良くすることです。地図を作る過程の中で、 みんなが情報を出し合い、話し合うことで、自分たちのまちや互いのことがわかり、そこで生まれた関係が、 地域での日頃の活動や災害時の助け合いにつながっていきます。

参  考
 「防災活動研修会支援助成事業」で
  地域の助けあい・支えあいの関係づくりを応援!

 北海道町内会連合会では、平成17年度より『防災活動研修会支援助成事業』を実施し、 会員組織や会員組織所属の地区連合会 ・単位町内会が主催・共催する「防災訓練」や「自主防災組織研修会」に対し、 2万円の助成をして、各地の安心・安全な町内会活動を応援しています。