2008.7.14 更新


 創立30周年記念北海道町内会連合会大会が、去る5月27日、札幌市かでる2.7において、道内より約330名の参加を得て開催されました。
 本大会は、北海道町内会連合会の創立30周年を記念して、式典・表彰、記念講演、研修会、記念パーティの内容で行われました。

▲高橋はるみ知事より祝辞をいただきました ▲道内より約330名の参加をいただきました

式典・表彰  町内会活動への功労に対し667名に表彰・感謝状が贈られました
全国自治連兼松久和代表(右)から感謝状を受け取る佐藤代表理事(左)

 式典・表彰では、町内会活動に貢献された方々に創立30周年を記念して、北海道知事からの感謝状が9名、 北海道社会福祉協議会長からの感謝状が11名、北海道共同募金会長からの感謝状が238名、全国自治会連合会長からの感謝状が1名に贈られ、 同時に、北海道町内会連合会からは特別表彰と感謝状が387名、さらに、例年実施の組織に対する表彰と感謝状が21組織に贈られ、 受賞者667名を代表して、江別市の武田正義さんが謝辞を述べられました。



記念講演 「知床を語る〜住民運動から世界自然遺産へ」
講師 午来 昌 氏 (前斜里町長)
●ウトロに生まれて
 私は知床の斜里町ウトロで農家の8人兄弟の長男坊として生まれました。当時の知床は馬車が通れるくらいの山道が1本通っただけの不便な地域でした。 少年時代は寺子屋みたいな学校に通い、ウトロは20〜30戸の集落で、行事にはみんなが集まり、苦楽を分かち合い、 苦しいけれどもホッとする絆を感じる中で育ちました。私が中学3年になった昭和27年に親父が脳溢血で他界し、 親戚の叔父叔母、近所のみなさんに助けられ、百姓をやりながら7人の兄弟とお袋と生活する事ができました。お袋も去年の8月に92歳で他界しましたが、 朝早くから夜遅くまで働きっぱなしのお袋でした。車がないウトロで馬車を使って土や砂利等を運ぶことが、 当時の私にできる世話になった皆さんへの最大の恩返しでした。
 
●知床の自然を守るため町議会議員に
 昭和30年代は経済の流れがガラッと変わった時代です。そんな中で海や川はゴミ捨て場のような扱いで、 道路や港ができれば地域の発展になるんだという風潮でした。山は国有林を切って林道ができていく。 「これで良いんだろうか?」と疑問を持ち続けていました。私が30歳の時に後押しがあり、自分の生まれた故郷を何とか守りたいとの思いから町会議員になりました。 ところが、先輩の議員からは、「自然保護でメシが食えるか?この若造黙れ。」と突っぱねられ、「若さはどうしようもない。畜生、今に見てろ。」 という気持ちで4期16年間、議員を務めました。
●自然保護運動「しれとこ100平方メートル運動」
 昭和46〜47年の田中角栄さんの「日本列島改造論」と原野商法の嵐が吹き荒れた時、純粋な知床開拓離農者の農地をブローカーが買い漁った事がありました。 それを防ごうと、当時の町長とともに農水省や北海道農務課に訴えましたが、「法律で国や町が農地を買う事はできない」と冷たい一言で終わりでした。 そんなある日、新聞のコラム欄に紹介されたイギリスのナショナルトラスト運動という、会員を募って名所・旧跡を団体が買い上げるという方法にヒントを得て、 昭和52年に「知床で夢を買いませんか」と『しれとこ100平方メートル運動』がスタートしました。 100平方メートル当たり8千円の寄付を募りそれを元手に買い占められた土地を買い戻そうという運動です。当時の町長も不安だらけの中、 いざスタートしてみると全国から大変な反響で、あっという間に1万5千人になっていきました。昭和52年頃の8千円は決して安くはなかったはずですが、 面積は472ヘクタールに及びました。
●国有林の伐採計画に反対して町長に出馬
 そんな流れの中で昭和61〜62年頃、国有林の伐採問題がありました。当時私は百平方メートル運動の推進副本部長という役割を持っていました。 国有林といえども何とか伐採を中止させようという思いで町長選に出馬し、見事、推進派の現職に勝ちました。 それは地域のみなさんの熱い思いが背中を押して支えてくれたからです。以降5期20年間、職員や町民にお世話になりながら、 斜里町長として地域づくりをすすめてきました。
●知床の世界自然遺産への登録に向けて
 平成4年、日本がユネスコの自然遺産条約締約国として世界に仲間入りし、平成5年に文化遺産では姫路城や法隆寺、 自然遺産では屋久島と白神山地が登録されました。この時、大きな自然を持つ北海道がなぜ声をあげないのかと思いました。 「北海道が手を挙げないのなら知床だ。何年かかってもやろう」と、平成5年から調査を行い、羅臼町の前・現町長と苦労を共にしながら、 平成17年にやっと実現しました。知床のバックボーンは自然です。観光客は自然に感動し、農業や漁業は自然の恵みによって成り立ちます。 自然を大事にする事が未来に繋がっていく大きな土台になると、そんな思いを込めて世界自然遺産を目指しました。
 
●子ども達に残せる大きな宝物
 知床の人々は、自然の恵みがなければ生きていけません。私は、足元にある自然をみんなで磨きをかけて一つの宝にしたいと思いながら山と共に歩んできました。 知床の世界自然遺産は、今、私たちが子々孫々に残せる大きな宝です。これから何世紀も知床を守り育てる事が、地域に住む人々にとって、 また北海道に住む人々にとっても、知床が一つの発信基地になることを願っています。
●人の繋がり、地域の絆を大切に
 こうした思いを支えてくれた地域のみなさんがいたからこそ、今の私があります。「自分だけ儲ければいい」「隣の世話になんかならなくてもいい」 「地域の世話なんてもってのほかだ」という勝手な人がどんどん増えてきたら、地域社会は崩壊してしまいます。地域のために苦労している皆さんには、 こんな時代だけれども今後も思いを大きく持って、人の繋がり、絆を失わずにがんばってほしいと思います。
 
(文責・事務局)


研修会 「安心・安全な暮らしを支える町内会での個人情報の取扱い」
講師 石川 和弘 氏 (札幌総合法律事務所弁護士)
▲講師の石川弁護士(右)と仲世古弁護士(左)
●情報の提供、「第三者提供」と「委託」2つの類型
 町内会が個人情報を取り扱うケースは主に以下の4つのケースが大方です。@情報の取得、A情報の利用、B情報の管理、C情報の提供です。 このうち問題になるのは、C情報の提供がほとんどです。情報の提供には「第三者提供」という類型と「委託」という2つの類型があり、 「第三者提供」は本人の同意が必要だが、「委託」は同意が不要であるという点が重要になってきます。
 
●行政と町内会が「委託」の関係で情報を共有
 現状では、個人情報の過剰反応が起こっているため、情報がうまく動かないという問題を、多くの町内会が抱え込んでいると思われますが、 この問題を行政と町内会が「委託」の関係を使って情報を共有することができれば、戸別訪問の苦労はなくなると思われます。 行政が管理している情報を「委託する」という方式を使って町内会に開示すればよいわけです。また、個人情報を災害時に利用するのであれば、 人の生命等を保護する必要がある場合として、個人情報保護法23条1項1号により情報の提供が認められることになります。 また、災害はいつ起こるか分からないですし、いざ災害が起こったときに、いくら情報を共有するといっても、 地域全体が極度の混乱状態に陥った状況の中で、情報提供をすることは現実的に不可能ですから緊急性という要件も充たすでしょう。 したがって、行政は、平時より右記の趣旨に則って、施案を策定する必要があるのです。
●情報管理のリスクとその対策
 他方、町内会としては、同意の要不要に関わらず、個人情報の保護は必要であるということについて充分に理解しておくことが必要ですし、 行政から情報の提供を受けた場合には、より厳格な管理責任が問われるようになるということを理解しておくべきです。そのうえで、 @他の町内会との経験交流、A勉強会、研修会、Bマニュアルの整備といった意識付けの推進が不可欠となります。
●町内会版の保険開発を提案
 ただ、残念なことに、このようなリスク回避策をとったとしても、完全に情報漏えいをシャットアウトすることは不可能です。 そこで、情報が漏洩した場合のリスク回避策としては、情報流出時の損害を保障する専用の保険があります。ただし、現状ではこの保険は、 100%企業向けに開発されている商品であるため、掛金が極めて高額であるという難点があります。この保険の町内会版を開発してもらうよう、 声を上げていくことも、今後の課題として必要だと考えられます。


大会宣言
「安心・安全なまちづくりをすすめるため
大会決議が賛同されました」
 記念大会の締め括りには、北海道町内会連合会の創立30周年を期して、安心・安全なまちづくりを積極的に推進していくことを決議した大会宣言が長谷川敬二ブロック総括理事により読み上げられ、満場の拍手で採択されました。
     
     
大会宣言文
 今日、私たちの地域では、急速に進む少子高齢社会のなかでの介護問題や孤独死の問題、度重なる地震、台風、 竜巻などの自然災害に伴う被害、高齢者を狙った悪質リフォームなどの被害、いじめや児童に対する犯罪など子どもの安全に係る諸問題、 更には地球規模での環境破壊、資源問題など、実に多様な課題が日々の生活の中に顕在化しております。
 とりわけ、家族機能の低下や住民同士の「繋がり」の希薄化が指摘される中、近隣住民の暖かな心で支えあうまちづくりの実現に向けて、 町内会自治会活動に寄せられる役割と期待はますます高まっていることを感じています。
 私たち町内会・自治会は、地域住民一人ひとりが抱える諸課題を的確に把握し、その解決に向けて、行政、 社会福祉協議会をはじめ関係機関・団体と連携を図りつつ、住民同士が助け合い、支え合う地域社会の実現をめざしていくことを誓います。
 本日ここに、創立30周年記念北海道町内会連合会大会を期して、当面次の事項について積極的に推進していくことを決議し、 誰もが安心・安全に暮らせる住みよい北海道づくりに向け、一層努力することを宣言します。


  1. 災害に強い地域づくりのために、住民による自主防災活動をすすめ、高齢者や障がい者などの災害時要援護者と呼ばれる方々の日頃の見守り、 災害時の体制づくりなど安全・安心な地域づくりを推進します。
 2. ひとり暮らしの高齢者等が消費者被害に遭わないための近隣住民によるネットワークづくりを推進します。
 3. 子どもたちを事件や犯罪から守るための防犯パトロールなどを呼び掛け、犯罪のない安全で安心な地域づくりを推進します。
 4. 環境への負荷が出来る限り低減される社会に向けて、ゴミの減量化と資源リサイクル全道運動を推進します。

平成20年5月27日
創立30周年記念北海道町内会連合会大会参加者一同