平成21年度町内会活動実践者研修会は平成21年8月10日、札幌市において道内各地から約140名の参加を得て実施されました。
 本年度は、地域住民の参加はもとより高齢者自らも運営に参加して、高齢者の生活を支えあっていけるよう、町内会におけるふれあいサロンのすすめ方を学びました。


実践報告  町内会におけるふれあいサロンづくり

報告@
町内会福祉部による「いきいきサロン」
〜きずなで目覚めた いきいきサロン〜
報告者:登別市鷲別2丁目町内会長 中原 義勝 氏
 ▲タオルを使っての「かろやか体操」
 登別市鷲別2丁目町内会(250世帯)では、「ひとり暮らしは寂しい」、「何か行事を考えて欲しい」との高齢者からの声により、平成20年からひとり暮らし30世帯を対象に「いきいきサロン」を開催している。3年前に設置した福祉部が運営を担当。会場は町内会館がないため、恵愛病院のホールを借りた。内容は、健康推進委員の「かろやか体操」、懐メロ合唱など。地域包括センターの協力で、サロン開始前の血圧測定と健康相談、認知症・悪質商法対策等の講話を盛り込んだ。新年交礼会は鍋を囲み、2月の子育てサークルとの合同サロンではじゃがいもで室内パークゴルフを楽しんだ。サロンの実施により、ひとり暮らしの方が積極的に行事に参加するようになり、町内会が活性化した。今後は、ひとり暮らしに限定せず、高齢者全般を対象にしてサロンの輪を広げたい。

報告A
高齢者による「高齢者のたまり場」づくり
 気軽に集う交流の場〜
報告者:富良野市新富町あずさ会長 成田 詞郎 氏
 ▲子ども会との世代間交流
 富良野市新富町あずさ会(228世帯)では、地域の高齢者が互いに助けあえる場をとの意見を受けて、平成19年に「高齢者のたまり場」を開設した。場所は、高齢者が自由に出入りして、情報交換や相談ができる地域内の農事組合会館。事前アンケートにより、会費は会員が年間2、000円、会員外は1回300円とし、開設日は月2回(第2木曜・第4土曜)とした。開設時間は10時〜16時頃までとし、手芸、健康体操、料理、囲碁・将棋、食事会、日帰り温泉旅行等を自分たちで計画。昨年12月には、子ども会との世代間交流で昔の遊びを楽しんだ。サロンは、お互いを思いやることの出来る場となっている。今後は、冬季間の送迎を検討したい。

報告B
町内会ボランティアによる「ふれあいサロン」
〜沼ノ沢サロン・歩け歩け運動とボランティアの会〜
報告者:夕張市沼ノ沢町内会顧問 白石 清志 氏
 夕張市沼ノ沢町内会(420世帯)のふれあいサロンは、平成19年に開設して今年で3年目。サロン開設のきっかけは、平成18年の夕張市財政破綻にある。財政破綻で、集会所併設の支所・連絡所が閉鎖されることになり、集会所存続のため、町内会で管理・運営をすることになった。そんな中、「ふれあいサロン」が夕張市社会福祉協議会の支援もあり、集会所で開設されることになった。サロンは「誰でも遊びに来てください」と呼びかけ、毎週火・金の週2回、午前9時〜12時まで、卓球、お茶・お茶菓子・漬物を囲みながら談話を楽しんでいる。12月〜3月の冬期間は、転倒や閉じこもり防止のため、足腰を鍛える「床で愉快に歩こう会」をサロンに併せて実施した。また、同町内会のサロンの仲間は、駅前の公衆トイレの清掃や空地の環境整備を「財政破綻はしたが、再生に向けて掃除くらいは自分たちの手でやろう」と頑張っている。
 ▲きれいに整備された花壇  ▲清掃を実施している駅前の公衆トイレ


講義
 テーマ「町内会におけるふれあいサロンのすすめ方」
講師 岩見 太市 氏(NPO法人シーズネット代表)
●サロンは女性の世界、男性が集まりやすいサロンを
 サロンは女性の世界です。だからこそ男性の老後が大きな課題になっています。
 その典型が孤独死で、ひとり暮らしは女性が多いのに、孤独死の7割が男性です。
 女性と男性の孤独死を比較すると、女性はすぐ発見されますが、男性はなかなか発見されません。いかに男性の老後が孤立しているか明白です。これからのサロンは、男性が集まりやすい地域の拠り所をどうつくっていくかが最大のテーマです。

●サロンは対象者を限定しないほうが良い
 住民の孤立化現象が進み、地域、人と人とのつながりが薄くなってきています。そのため、暮らしの中で、寂しさ、孤独感、将来の不安感を抱える高齢者が多くなっています。
 少子高齢社会と住民の孤立化の流れがイコールになっています。特に、団塊世代の方が65歳以上になる5年後、地域で何が起こるかを今から捉えておくべきだと思います。
 悩みを自分達で抱え込んでしまう老老介護の方、形の上では同居だが良い関係ではないため、ひとり暮らし同様の方など、孤立はひとり暮らしの方だけの問題ではありません。
 そんなことも考慮して、サロンは対象者を限定しないほうが良いと思います。

●住み替えて、そこに老後の幸せはあるか
 今、高齢になって長らく住み慣れた地域を離れる「住み替え現象」が増加しています。特に、郊外から札幌の街中への住み替えです。札幌に移り住み、果たしてそこに老後の幸せがあるのでしょうか。利便性が高いほど、町内会の存在はほとんど必要なくなり、地域という概念はなくなります。地域の中で仲の良い友達や良い人間関係がある方は、簡単に引っ越しされません。

●人は「煩わしさ」と「寂しさ」どちらに耐えられるか
   多くの男性の高齢者が地域に溶け込むのに苦労されています。もう人間関係は嫌だ。煩わしい付き合いはしたくない。自分の好きな趣味に生きたい。旅行に行きたい。でも、趣味に生きることが難しくなった時はどうしますか。人間関係は煩わしいものです。でも、「煩わしさ」と「寂しさ」、人間はどちらに耐えられるのでしょうか。
 今、高齢者の万引きが増えています。万引きの動機は、孤独感、寂しさが背景にあります。高齢者の孤立化をなんとかするために、今、サロンの場が求められているのです。

●サロンの役割 その@「行くところがある」
   例えば、天気が良くて、何も用事がない日に、あなたは行く場所がどれだけありますか。外には出るけれども、人との交流がない。65歳以上のアンケートで、圧倒的に多かったのが外でのウォーキングでした。ただそこには会話がない。健康には体と心の健康があります。人と関わらずして、健康はあり得ないのではないでしょうか。地域の中に、そういう住民の方達の居場所をどう作っていくかが、1つ目の大きなテーマです。

●サロンの役割 そのA「会いたい人がいる」
   これからの高齢者の暮らしの中で、1番怖いのが孤立した暮らしです。女性は人とのつながりを持てます。散歩1つとっても女性はいつもお友だちと歩いているが、男性は1人です。地域の中で人と人とがどうつながるのかということが非常に大きな課題です。サロンの中の人間関係で1つお願いがあります。人と人とのつながり型は縦か横かの2つです。サロンに縦型を持ってきて「ひとり暮らしの方いらっしゃい」というと、人は絶対集まりません。福祉の対象者ですよという提供側の理論です。これからのサロンはそういう縦型はではなく、友達同士が集まって来るような横のつながりが大事です。現役時代に縦型社会だったサラリーマンOBの方が定年になった時、自分を売り込むのに現役時代の自慢話を始めます。横型の地域での人と人との付き合い方が分からないのです。横型をベースにしてサロンが存在しなくてはいけません。

●サロンの役割 そのB「することがある」
   現役時代には役割があり自分の存在感がありました。これから地域の中で一人ひとりに自分の存在感をどう見つけていただくかが課題です。趣味や特技をサロンで提供するなど、そういう場所としてサロンをどう活用をするのかが大事です。

●サロンを拠点として町内会活動が見えてくる
   毎日行く所があり、会いたい人がいて、することがある、そういう場としてサロンをどう形づくるかが問われています。そして、人と人との関係をどうつくり、自分の居場所をどういう形でつくり、自分の存在をどう形で示していくか。これらを包括した形でサロンづくりを考えていただきたいと思います。さらに、どういう企画で、どういう頻度で、どういう内容でやっていけば、町内に住んでらっしゃる方達が気軽に集まっていただけやすいかを考えていただければ、サロンを拠点とした町内会活動が見えてくると思います。

●地域食堂といわれるコミュニティサロン
   今、北海道で非常に広がってきているのが、商店街の空き店舗等を使った地域食堂です。サロンの一種でコミュニティカフェとも言われています。高齢者を対象にして昼食を中心に提供するサロンです。ひとり暮らしの方にとって食生活は大変です。毎食1人だけの食事で、たまには、地域の人と一緒におしゃべりをしながら食事をして欲しいということで、お昼12時から2時位まで昼食後、コーヒーを飲んだりして過ごします。食事はワンコイン5〜600円で提供しています。このように、サロンは地域の事情によって色々工夫して行われています。

●拒絶される方をサロンにどう引き出すか
   今、町内会にマンションの人達が集まってくれますか。従来、人間関係の煩わしさが嫌だからマンションに入る方が多かったのですが、最近は様変わりして、マンション内の人間関係をどう作っていくかが切実な問題になっています。
 そんな中、孤独死の防止と早期発見は、人間関係が基盤になりますが、中には人間関係を拒絶される方もいます。拒絶はされるけれども、周りはその人の安否確認や支援が必要じゃないかということで、電気がついているか、カーテンが開いているか、新聞受けに新聞紙がたまっていないか等、チームを作って、その人の無事をさり気なく見守ってきました。ところがある段階から急ブレーキがかかりました。見守られている方がそれに気付いた時、「私を見守ってくれてありがとう」ではなく、「どうか私を監視しないでください。」と。周りはそんな意識は全然ないのに、見守りされる側は、「もうプライバシーを見ないでよ!」というわけです。このように人間関係が難しい方々の見守りをどうするか。むしろ今は、人間関係が難しい事例のほうが多く、同じ地域の住民としてどうにかしなくてはいけません。しかも、こういう方はサロンには出て来ないわけですから、そういう方達をサロンという形でどう引き出すかが大きな課題です。

●町内会内にNPO的な仕組みも
   高齢になると介護保険のサービスだけでは在宅の暮らしは出来なくなってきています。例えば、窓が汚れている、電球が切れた、夏物と冬物の衣替えが出来ない、家の中でベッドとかソファを動かしたいけど自分では動かせない等。でも、助けてくれる家族がそばにいない。そういった困り事への対応が、町内会のニーズとして出てくると思います。
 将来的には、町内会の中に、こういう困り事を多少有償でサポートするようなNPO的な活動をする仕組みができる可能性もあります。「わが町内会に住んでいれば、多少体が弱くなってひとり暮らしでも安心して住めます。」という活動にどう近づけるかが、これからの町内会の大きな課題です。

●鍵を預って、ひとり暮らしを支える仕組み
   配食サービスが見つける事故で多いのは、孤独死ではなく、何かの拍子に家の中で倒れて、起き上がれない方です。最近、マンションの管理組合では、「希望する方の鍵をお預かりします」という活動が起こり始めています。家の中で何か起こった時、管理者がすぐ家に入れるようにするためです。現に、配食サービスの会員登録でも、鍵を預かってほしいという要望が増えています。家の中で何かが起こった時、隣近所の人が駆けつけるような住民が支える仕組みづくりが町内会にも求められています。


グループ演習
 午前中の講義を踏まえ、小グループに分かれて、実際にふれあいサロンの年間あるいは月間の計画を立て、企画や運営方法を話し合い、模造紙1枚にまとめました。
▲みんなで企画を話し合い中の様子

(1)自己紹介
 グループ内でお互いの自己紹介をしました。
(2)司会、書記、発表役の互選
 演習をすすめる上での司会、書記、まとめでの発表役をお互いに選びました。
(3)司会役の進行でスタート!
 司会の名札を胸に下げた司会役の進行で、話し合いをスタートしました。
(4)付箋に記入
 サロン活動に関する幅広い考えを付箋に自由に記入しました。
1.名称= 事業名
2.内容 @ いつ
  A どこで
  B 参加対象
  C 何をやるのか
  D 実施体制(サロンを運営するチーム)
  E 費用(月もしくは年単位で)
  F 地域PRの方法
●企画案の決定
 付箋に記入した内容をもとに話し合い、具体的にどのようなサロンにするのか決めました。
▲模造紙にまとめた企画案
●模造紙に企画案を記入
 話し合いで決まった内容を書記がまとめました。
 

 
まとめ 
 模造紙にまとめた各グループ企画案は、発表役が前に出て、発表しました。
 演習により、サロンの具体的なイメージが膨らんだと思います。それぞれの地域に持ち帰って、是非、今後の取り組みに役立たせてほしいと思います。