平成23年度町内会活動実践者研修会は平成23年8月1日、札幌市において、道内各地から約150名の参加を得て実施されました。
 本年度は、地域のたすけあい活動や絆づくりを進めるため、孤独死防止にむけた個人情報の取扱いを学びました。


実践報告  安心・安全な地域づくりのためのたすけあい活動

報告@
高齢者孤独死防止のための助け合い地域づくり
  滝川市東町連合町内会前会長 東小野 忍 氏
▲報告者の
 東小野前会長
 滝川市東町連合町内会(1,508世帯)では、増加するひとり暮らしの高齢者が孤立することなく安心して暮らせるよう、助け合い地域づくりとして3つの事業に取り組みました。 
・たすけあいチームによる定期訪問
 1つ目は、単位町内会役員によるたすけあいチームの高齢者世帯への訪問活動です。月一回「こんにちは、お変わりないですか?」と訪問し気兼ねない話し相手となり、あわせて茶話会の開催などで親交を深めました。地域の方々にも、向こう三軒両隣の精神のもと、日ごろから隣近所の高齢者を見守ってもらうよう協力をお願い、各単位町内会の役員会などの際に、訪問活動や茶話会の際の良かった点や問題点などの意見交換を行い、見守り活動の充実を図っています。
・災害時要援護者のための体制整備
 2つ目は、自主防災組織結成と緊急時の体制づくりです。滝川市が作成する災害時要援護者支援リストは、自主防災組織や単位町内会、民生児童委員が市に対して申請をすると、個人情報の適切な取り扱いを約束した上で、要援護者の住所、氏名等の情報提供を受けることができます。各単位町内会で提供を受けた要援護者情報をもとに、災害時に誰が誰を支援するのかを明確にして、支援体制を整備しました。
・いのちのボトル事業が全市的取り組みに発展
 3つ目は、高齢者の孤独死防止のためのネットワークづくりです。地域全体に高齢者の見守りの必要性が浸透する一方で、高齢者の方から、個人情報やプライバシーを守りたいとの声があがってきました。その対応として、小樽市の取り組みを参考に、「いのちのボトル」を約300世帯の要援護者に配付することにしました。ボトルには、緊急時に必要な情報を記入した安心カードを入れ、もしもの時に備え冷蔵庫に保管してもらいました。
 さらに、この「いのちのボトル」事業は、平成22年度に滝川市の全市的事業「救急医療情報キット」の配付として展開されることになりました。市の事業では、冷蔵庫の中を見られたくないという意見や、冷蔵庫を開けないと情報キットがあるか分からないという問題点があったことから、容器をボトルからマグネット式のクリアケースへ変更し、冷蔵庫の外側に取り付ける方法が採用されました。

報告A
安心・安全・福祉(しあわせ)の地域づくり〜町内会「福祉部」の設置
北見市緑ヶ丘もみじ町内会福祉部長 川村 裕昭 氏
▲報告者の  
川村福祉部長
・大雪と断水をきっかけに福祉部を設置
 緑ヶ丘もみじ町内会(250世帯)では、平成16年の100年に1度の大雪、また、平成19年の大規模な断水の発生をきっかけに、高齢者には周りのサポートが必要だと痛感し、平成20年1月に福祉部を設置しました。同時に、町内会で会員把握のための会員カードを作成するため、町内会独自の個人情報取扱要綱の作成に取り組みました。作成にあたっては、北見市地域福祉事業合同推進本部(北見市、北見市北見自治連、北見市社協、北見市民児協)発行の町内会における個人情報保護の手引きを参考にしました。
・世帯名簿・緊急時要援護者台帳と緊急時災害時ボランティア登録台帳への登録
 まず、福祉部の事業として、町内会加入時に提出された会員カードの更新と合わせ、緊急時要支援者を把握するために、世帯名簿・緊急時要援護者台帳への記入を会員全世帯に依頼しました。依頼にあたり、台帳は町内会活動以外には使用しないこと、個人情報取扱要綱に基づき情報の取得・利用・管理を行うこと、管理責任者は町内会長であることを明確にしたうえで行いました。その結果、約70%にあたる170世帯から回答がありました。さらに、緊急・災害時の支援活動のためのボランティアを募ったところ、大型特殊免許や看護師資格を持つ方々などから協力が得られることになりました。
・災害時の高齢者施設との協力体制
 北見市は、平成22年に災害時の要援護者対策として市内の特別養護老人ホーム等8施設を避難所として使用できるよう、災害時に関する協定を結んでいます。しかし、当町内会の避難所に指定されている小学校や児童館には、バリアフリー化されていない施設があるため、独自に町内の福祉施設と「災害救助に関する覚書」を締結し、災害時に、設備の整ったグループホームとデイサービスセンターを高齢者、障がい者の避難所として利用できることになりました。


講義
 テーマ「町内会における個人情報の取扱い」
講師 石川 和弘 氏(札幌総合法律事務所弁護士)
▲講師の       
石川和弘弁護士
●情報の共有化に関する過剰反応
 平成19年7月の新潟県中越沖地震の際、柏崎市防災・原子力課では、災害時要援護者リストを作成していながら、他の機関や住民と情報の共有が出来なかったために、ひとり暮らしの高齢者の安否確認に6日間も費やしました。個人情報保護法を誤解し、過剰反応を起こしてしまったため、リストを活用できなかったのです。その後、すぐに厚生労働省は各自治体に対し、災害時要援護者名簿を自主防災組織と共有できるような体制づくりをするよう通知を出しました。国は、緊急時における要援護者支援のためには、行政と自主防災組織との間の情報共有が必要であることを認めています。

●個人情報取扱いの4つの局面
 個人情報の取扱いでは、取得、利用、管理、提供の4つの局面が問題となります。情報を取得するときには、情報をどう利用するのかを知らせなければいけませんし、利用にあたっては、情報取得の際に伝えた目的以外に使ってはいけない規制が生まれます。管理というのは抽象的ですが、適正な管理とは何かを考えていかなくてはなりません。そして、1番難しいのが提供です。この提供についての法律をよく理解していないために誤解が生じているのではないでしょうか。

●情報提供の2類型〜第三者提供と委託
 情報提供には、「第三者提供」と「委託」の2類型があります。法律では、情報を渡す際に第三者提供の場合は本人の同意が必要、委託の場合は不要と決めています。これには「利用目的」というキーワードが関わってきます。
 
 @第三者提供↓
 A委託↑

 @第三者提供〜利用目的が異なる場合
 ・Aさんは、B町内会への加入を申し出て、住所・家族の名前・電話番号等の緊急連絡先を台帳に記入し提出した。
 ・AさんとB町内会の間には、個人情報は、町内会活動以外には使用しないという約束がある。
 ・後日、B町内会は、C警察官から捜査のためにAさんの緊急連絡先を教えてほしいと頼まれた。
 ・B町内会は、Aさんと約束した利用目的とは異なる取扱いをしてはいけないため、情報提供する場合は、Aさんの同意が必要となる(例外あり、後述)。
 A委託〜利用目的が変わらない場合
 ・B民間企業が、取引先A(個人)の情報が載った帳簿を、C税理士に渡して会計処理をお願いした。
 ・B企業と、C税理士は、A(個人)の情報を会計処理のために利用する。
 ・利用目的が変わらないため、A(個人)の同意は不要で、情報提供ができる。

●第三者提供には例外がある
   同意が必要となる第三者提供には、個人情報保護法で認められた例外があります。
(1)法令に基づく場合
(2)人の生命、身体または財産の保護のために必要な場合
(3)公衆衛生の向上、または児童の健全育成の推進に必要な場合
(4)国の機関もしくは地方公共団体、又はその委託を受けた者が、法令の定める事項を遂行
することに対して協力する必要がある場合
 ▲講義の様子
 先ほどの@第三者提供の例では、Aさんの同意無しにB町内会は、第三者であるCに情報提供はできないのが原則です。しかし、この場合、第三者Cが警察官であることから、例外(4)に該当するため、回答しても問題はありません。要は国か自治体からの要請で、教えてほしいと言われた場合は回答しても大丈夫です。

●情報の共有のために徹底した管理を
   町内会が、災害時の要援護者支援のために、自治体作成の災害時要援護者リストを利用するのならば、利用目的は変わらないので、委託という関係のもとで、個々の住民の同意を必要とせずに情報共有が出来るはずです。現行の法律の枠組みの中でも、町内会と自治体の間で情報共有は可能ですが、各自治体によって考え方や対応が異なっているのが現状です。
 自治体と町内会の間で、情報共有化の障害となっているのは、管理の問題です。自治体が情報提供した町内会から、情報漏えい事故が起きると、その町内会だけではなく、自治体の情報管理体制の責任を追及される可能性があるからです。積極的な地域福祉活動のためには、情報を共有化する必要があると同時に、町内会の情報管理体制を徹底すべきなのです。
 町内会が、要援護者支援やひとり暮らしの高齢者の見守り活動を行うために取得・利用する個人情報には、センシティブ情報が含まれています。センシティブ情報とは、借金や貯金の額、病歴や身体の障がい、生活保護の受給などの、取扱いには特に配慮が必要な個人情報であり、漏えいした場合は精神的苦痛が大きく、また、恐喝や詐欺などの2次被害を受けやすい情報でもあるため、徹底した情報管理が必要です。それぞれの町内会で情報管理の徹底を考えるのも重要ですが、自治体とどのような管理体制を敷くべきかを協議していくことが必要です。


≪参加者からの質問≫
個人情報保護法の対象は、5,000人以上の個人情報を有する民間の事業者であるとありますが、5,000人に達する世帯を有しない町内会は、この法律には該当しないのでしょうか。


≪石川弁護士の回答≫
5,000人を超える世帯を有しない町内会は、個人情報に関する取扱い事業者には該当せず、個人情報保護法には該当しません。しかし、個人情報保護法適用外でも、個人情報を適正に取り扱わなくてはならないことには変わりません。地域住民の協力を得られるよう、町内会での個人情報の適正な取扱いの基準として法律に準拠した運営を心掛けるべきでしょう。