平成25年度町内会活動実践者研修会は平成25年8月6日、札幌市において、道内各地から74名の参加を得て実施されました。
 本年度は、町内会における広報活動の充実と町内会活動の活性化を目的に、パソコンを使った広報紙づくりを学びました。

実践報告  見晴台自治会だよりの発行から配付まで

報告
  江別市見晴台自治会総務部副部長 仲西 正彰 氏
▲広報紙づくりは豊かな人間関係からと話す仲西副部長
●記事の依頼は具体的に
 江別市見晴台自治会(1,520世帯)では、広報紙「見晴台自治会だより」を約19年前から毎月発行しており、今月で第222号となります。この広報紙は、A4判・4ページで、全加入世帯に配付しています。
 広報紙の作成にあたって、初めに掲載内容を考えます。新規事業に関する記事は一から作りますが、多くは例年実施している事業なので、前年同月の広報紙を参考にします。また、年間行事予定表と役員会の資料も広報紙の内容を決める際に確認します。発行2ヶ月前の役員会で各部に記事と写真を依頼しますが、その際、「こういう記事を思い描いています」と具体的なお願いをするように心がけています。

●紙面は編集会議で厳しくチェック
 記事や写真が集まると、ワードを使用して広報紙を編集します。広報紙では、号数、月日と曜日、会員の氏名、電話番号等は絶対に間違えてはいけません。これらに誤りがあると大きな問題になりますので、必ず何度か確認することが、担当者の責任です。また、写真は、不要な背景等をカットし、明るさを微調整しています。
 できあがった広報紙案は、会長、副会長、総務部長、総務副部長による編集会議で内容を厳しくチェックし、多くの修正が入ります。後日、これらを修正したものをPDFファイルにして編集会議のメンバーへ電子メールで送ります。そこで更なる修正が入り、ようやく印刷原稿が完成します。印刷された広報紙は、班長から各会員に配付しま す。

●豊かな人間関係で情報が集まる
▲見晴台自治会だより
 広報紙の発行を続けるためには、過去の広報紙の原稿データの蓄積がとても大切です。これらは、活動の貴重な記録であり、自治会の重要な財産です。広報紙づくりの仕事は、いつかは次の担当者に引き継ぎますが、この蓄積したデータをきちんと引き継ぐ必要があります。また、原稿データを作成する際のパソコンや写真処理の技術も継承していくことが望ましいのですが、普段パソコンを使わない方に一から教えることは難しく、常に広報紙担当の後継者を探しておく必要があります。
 良い広報紙づくりに一番必要なことは、自治会での豊かな人間関係だと思います。各部の部長、副部長、写真を提供してくれる一般の会員、これらの方々との豊かな人間関係がなければ、記事や写真、情報が集まりません。今ではホームページを使って広報を行うことも考えられますが、自治会には高齢者が多いために、今後もこのような紙媒体で、できるだけ詳しく、見やすい広報紙を発行していきたいと思っています。
 

講義
 テーマ「こころに届く広報活動
〜町内会の広報活動の考え方から広報紙づくりまで〜」
講師 山本 健二 氏(キタイトデザイン アートディレクター)
▲広報紙は作り手と住民が共同でと話す講師の山本健二氏
 私は、普段は企業広告に携わっており、各種パンフレットや新聞広告、商品パッケージ等の企画から制作まで、幅広く仕事をしています。本日は、どういった広報紙づくりをしていけば、会員の皆さんの心に届いていくかということをお話します。

●広報紙はコミュニケーション手段のひとつ

 町内会の広報紙は、作り手と住民が共同で作り上げていく性格のもので、特定の地域内の人々を読者として発行されています。地域内のコミュニケーションを図る手段のひとつと考えられ、「うちの町内会はこうなりたい」という希望が詰まった広報紙が理想といえます。

●町内会の未来を発信して、ともに考える紙面に
 広報紙は、どうしても行事や活動等の事後報告が多くなりがちですが、次のようなことを記事に含めると、地域のコミュニケーションがより深まります。
 1つ目に、一般社会やその地域で話題になっていることに対して、この町内会がどう取り組んでいるのか。2つ目に、地域での問題提起やアンケート結果。3つ目に地域の未来予想やそれに対する住民の意見。こういう町内会になっていきたいということを発信して、住民と一緒に考えてもらい意見を募ると、様々な情報が得られ良い効果をもたらします。

●広報紙づくりで重要な8つのキーワード 
1. コンセプトとニュース性
  誰のために書くのか、何のために書くのか。重要な情報を早く的確に知らせる。
2. 情報の確度と深さ
  内容の信ぴょう性の高さ、物事の本質にどれだけ深く迫っているか。
3. わかりやすさ
  読者に伝えたいという思いの強さ、いかに読者の側に立って書けるか。
4. おもしろさ
  娯楽性、物語性、紙面から感じる明るさ、楽しさ、躍動感。
5. 注意を喚起するセンス
  直感的にわかるレイアウト、キャッチコピー、見出し、写真、イラスト等。
6. 親しみやすさ
  作り手と読者との意見のやりとり、読者同士の情報交換等。
7. 公正さ
  賛同者の多さだけではなく正論かを見極め、読者に対する説明責任を果たすこと。
8. 写真
  いろいろなアングルで撮影すると、人や物の意外な「顔」がみえる。

 

●紙面構成・デザインのポイント
1. 見出し(タイトル)に力を持たせる
 

次の例のように、単純に名称を書くだけではなく、魅力的な短い文章を使いましょう。
  例)「第5町内会総会終了」→「地域と絆を深める方針を確認」
     「音楽会開催」→「未来へとどけ!夢のハーモニー」
     「平成25年度大運動会」→「跳んだ!走った!日頃の実力120%!」

2. 紙面に統一感を持たせる
  各記事の見出し部分の書体(フォント)を合わせると、紙面に統一感が出てきます。
 
3. 写真の使い方の工夫
   次の左側の例では、写真の説明『最優秀賞の山田花子さん』が見出しの内容と重複していて、目をひきません。
 そこで、右側の例のように写真のカット位置を変更し、説明を『「まさか私の作品が・・・」ご主人とご一緒に喜ぶ山田花子さん』と、話し言葉に変えるだけで、親しみやすくなります。
 

4. 紙面にメリハリをつける 
   ただ文字を流すのではなく、右の例のように、目立たせたい記事のタイトルには、網かけや白抜き文字等を使い、読んでいて目がとまる箇所をつくりましょう。
5. 印刷する紙の色に変化をつける
   白い紙ではなく、クリーム色やピンク、淡いブルー等の色紙を使うと、その町内会のカラーがイメージされてきます。また、季節ごとに色を変えてみるのも良いでしょう。
6. 寄稿・投稿を促すような仕組み
   「読者の声」等のコーナーをつくり投稿を促すと作り手と読者のつながりが生まれます。

7. 書体(フォント)の使い方を工夫する
   一般的にゴシック体と明朝体の使い分けをされているかと思いますが、タイトルはゴシック系の書体、本文は明朝体を使うと、比較的読みやすい紙面になります。書体の使い方は、新聞が手本になりますので参考にしてください。この他にも、丸ゴシック等、いろいろな書体がパソコンに入っていますが、多くの種類の書体を使いすぎると逆に読みづらく、まとまりのない紙面になります。
 

演習
 演習では15グループにわかれ、パソコンを使って広報紙づくりに取組みました。その中から3作品を講師からの講評とともに御紹介します。

●講評
【3グループ・しあわせ町内会だより】
 横書き2段組みで、シンプルにまとめられています。写真に説明をつけるのではなく、吹き出しで表現しているのがとても印象に残ります。また、表裏のレイアウトや書体が統一されていて読みやすい紙面構成です。
  (表面)  (裏面)  

【5グループ・黄色いエプロン】
 珍しい広報紙タイトルで、読者の関心をひいています。また、記事の構成がとても良く、流れるように読み進んでいけます。A4判の広報紙では標準的な縦書き3段組みで、見出しと本文ともに見やすく仕上がっています。



【8グループ・きずな】
 広報紙タイトルの横に入っているイラストがとても効果的です。表面のメインのキャッチコピーが目を引き、読者に親しみをもたせます。裏面は、見出しと本文のバランスが良く、書体の使い方も工夫していて、楽しく読める紙面になっています。
  (表面)  (裏面)  

●作品全体講評(講師 山本 健二 氏)
 グループ演習では、全道各地から参加されて、初対面の方々が多かったにもかかわらず、皆さん2、3年一緒に活動されているようでした。限られた時間で広報紙を仕上げられたのは、皆さんが普段から広報紙づくりに携わっており、要領良く作業を進められたからではないでしょうか。パソコンも定規や鉛筆の道具と一緒で、ワードの機能を使いこなすと、非常に見栄えの良い広報紙ができるようになります。今回の経験を地域の広報活動に活かしていただきたいと思います。